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舌がんの闘病生活を通じてたどり着いた「がんに感謝する」という境地

[公開日] 2025.08.29[最終更新日] 2025.12.24

写真はイメージです。(AIによる生成)
プロフィール お名前:あやっぺさん(ニックネーム) 年代:50代 性別:女性 家族構成:一人暮らし 仕事:派遣社員(大学事務) がんの種類:舌がん 診断時ステージ:ステージ2 居住地:京都府 診断年:2022年
※本体験談は、患者さん個人の経験に基づくものです。治療の経過や副作用、生活への影響には、個人差があります。医療的な判断や治療方針の決定の際には、必ず医師・医療従事者にご相談ください。 治らない口内炎から始まった不調がきっかけで「舌がん」が見つかったあやっぺさん。初発治療では手術を受けましたが、再発時には、「話す」「食べる」という根源的な機能を失う可能性を受け入れられず、手術をしないという決断をしました。自ら情報を集め、さまざまな治療法を模索しながら、がんと向き合った2年間。その軌跡と、たどり着いた境地について、お話ししていただきました。

告知時の率直な感想は、「やっちまったな」

最初の異変は、なかなか治らない口内炎でした。市販薬を試しても改善せず、かかりつけクリニックの耳鼻科を受診したところ、口内炎という診断でした。しかし、処方された薬を使っても症状は一向に良くならず、より詳しい検査を勧められました。 紹介されたのは、大学病院でしたが、予約が取れるのは2週間も先。不安に思った私は、「もっと早く診てもらえる病院はありませんか」と相談し、別の病院を紹介してもらいました。今思えば、この時の判断は正解でした。私の舌がんは、非常に進行が早いタイプだったからです。 病院を受診する前にクリニックで組織検査をしていたため、「ほぼ間違いない」という雰囲気でした。MRI検査も受け、悪性の疑いは確信に変わりました。そして2022年6月、正式に舌がんの確定診断を受けました。 告知を受けた時の率直な感想は、「やっちまったな」というものでした。これまでの不摂生な生活習慣が招いた結果だと痛感し、これは人生を見直せという警告なのだと受け止めました。不思議と、がん細胞に感謝したいという気持ちさえ湧いてきました。 当初の診断はステージ1でしたが、手術日を迎えるまでの間にがんは大きくなり、手術直前にはステージ2になっていました。医師からも「たちの悪い性質のがん」と言われ、その進行の速さに愕然としました。 手術は最短の日程で組まれ、6月30日に舌の部分切除術を受けました。さらに、医師から頸部リンパ節郭清術を勧められ、1週間後の7月7日に手術を受けました。この時、転移は確認されていませんでしたが、術後の病理検査で、切除したリンパ節にがん細胞が見つかりました。「取っておいてよかった」と、胸をなで下したのを覚えています。

舌がんが再発、「手術しない」という決断

術後の経過は順調だと思っていました。しかし、手術から2か月ほど経った9月頃から、頭痛や首筋の痛みが現れ始めました。担当医に相談しても、「手術の影響だろう」と痛み止めを処方されるだけ。超音波検査でも異常は見つかりませんでした。 しかし、痛みは増すばかりで、痛み止めも効きません。「これはおかしい」と何度も訴え、予定より早く検査を受けることになりました。その結果、舌の付け根部分の再発と、別のリンパ節への転移が見つかったのです。医師も「ここまで早いとは」と驚いていました。普段の診察では見えにくい、わかりづらい場所にがんが潜んでいたようでした。 医師から提示された治療方針は、舌の亜全摘手術と、化学放射線療法を組み合わせたものでした。「標準治療を全てやらないと厳しい」という説明でした。 舌の亜全摘は難易度の高い手術のため、最初にかかる予定だった大学病院で行うことになりました。手術を受けるしかないと一度は覚悟を決めましたが、執刀医の先生から言われた言葉が、私の考えを大きく変えました。 「この手術は非常に難しく、成功してがんを取り切れたとしても、術後の生活の質(QOL)は著しく低下します。これまでの生活とは一変するでしょう。切ったものは元に戻りません。よく考えた方がいい」 その丁寧な説明で、私が想像していた以上に過酷な現実が待っていることを知りました。壮絶な手術を受けても再発のリスクは残り、食事もままならず、誤嚥の危険と隣り合わせの生活になるかもしれない。それならば、残りの人生が短くても、好きなものを食べられる生き方を選びたい。そう強く思いました。 年末年始に「切らない治療」について懸命に情報を集め、光免疫療法やBNCT(ホウ素中性子捕捉療法)といった、自分の症状にも適応される可能性がある治療法を見つけました。そして年明け、私は「手術は受けません」と医師に伝えました。

標準治療から外れ、自ら探した治療の道

手術を断った後、今度はリンパ節のがんが皮膚を突き破って外に飛び出してきました。出血も始まったため、再び手術を提案されました。しかし、「手術だけ受けて、あとは光免疫療法などを試す」という私の希望は受け入れられませんでした。そのため、私は再度、手術を拒否しました。 そこから、私の治療法を探す日々が始まりました。まず、免疫チェックポイント阻害薬であるオプジーボでの治療を、私の強い希望で開始しました。しかし、効果が出るのを待っている間にも、リンパ節のがんは大きくなり出血が続きます。悪化を防ぐため、オプジーボは中断し、化学療法に切り替えることになりました。 幸いにも、この化学療法が効果を発揮し、がんは少しずつ小さくなっていきました。そして2023年5月、主治医が変わり、新たな提案を受けます。 「今の大きさなら、放射線治療で根治が目指せますよ」と。 根治の可能性があるなら、やる価値はあると考え、副作用への強い不安はありましたが、私は放射線治療を受けることを決意しました。 治療は壮絶でした。口内炎や味覚障害、皮膚炎といった副作用が強く出て、特に食事が困難を極めました。5分で食べられていたものが1時間かかるようになり、1日の大半を、痛みに耐えながら口に物を入れることに費やしました。通販で介護食を取り寄せたり、温泉卵やゼリー、ムースなど、噛まずに栄養が摂れるものを探したりと、さまざまな工夫をしました。 この辛い時期、私を支えてくれたのは、医療機関以外でのつながりでした。婦人科系の症状で通っていた漢方クリニックの先生や、整体の先生が、それぞれの専門分野から親身にアドバイスをくれました。また、臨床検査技師の友人や、アメリカのがん治療に詳しい研究者の友人からも、専門的な視点での情報をもらい、精神的な支えになりました。 ライターの仕事をしていた経験も役立ちました。自分の辛さや疑問、知りたいことを言語化し、医師や医療者に的確に伝えることができたのは、治療方針を決める上で非常に重要だったと感じています。

仕事への復帰、そして「がん」との向き合い方

がんの診断を受けた時はフリーランスとして働いていましたが、自分の治療と、当時施設にいた母の介護が重なり、仕事は一時的に中断しました。 治療が少し落ち着いた頃、治療費を稼ぐことと、社会とのつながりを保つため、リハビリを兼ねて派遣の仕事を始めました。週3回の大学での事務職です。当初、職場には病気のことを詳しく話していませんでしたが、放射線治療で通院が必要になった際、「リンパの治療で」とだけ伝えました。 カミングアウトのきっかけは、闘病体験を綴ったエッセイがコンテストで入賞したことでした。2024年の年末、この嬉しいニュースと共に、「実は、がんの治療をしていました」と職場の人たちに打ち明けました。皆とても驚いていましたが、「大変だったね」と温かく受け入れてくれました。 現在は積極的な治療は終わり、2か月に1度の通院と画像診断で経過観察中です。職場にも病気のことは理解してもらい、以前と同じように働くことができています。

これからがんと向き合う方へのメッセージ

私が闘病生活を通じてたどり着いたのは、「がんに感謝する」という境地です。そう言うと驚かれるかもしれませんが、私はがんになったことで、自分の生き方を見つめ直すきっかけをもらえたと思っています。がんを「やっつけるべき敵」と捉えるのではなく、「暴れん坊の同居人」くらいに考えてみてはどうでしょうか。攻撃すれば、相手もむきになってしまいます。これからがんと向き合う方に伝えたいことがあります。 まず、がんになった自分を否定せず、受け入れてください。 「なんで私だけ」と嘆くのではなく、「なったものは仕方ない」と事実として受け止めることから全ては始まります。 「じゃあ、どうする?」を繰り返してください。 受け入れた上で、次にどう行動するかを考え続けることが、道を開きます。情報を集め、人に相談し、自分にとって最善の選択を探し続けてください。 がんに感謝してみましょう。 難しいかもしれませんが、がんが自分に何かを教えるために現れた「必要悪」だと捉えてみると、向き合い方が変わってくるかもしれません。私は手術室に入る時、がん細胞への「表彰状」を持って入ったほどです。 もちろん、これは私個人の体験であり、考え方です。でも、もし今、途方に暮れている方がいるのなら、こういう捉え方もあるのだと、少しでも心の片隅に置いてもらえたら嬉しいです。
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