写真はイメージです。(AIによる生成)プロフィール
お名前:ミッキーさん(ニックネーム)
年代:60代
性別:男性
家族構成:一人暮らし
仕事:退職済
がんの種類:スキルス胃がん 膵臓がん
診断時:ステージ3A (膵臓がん)
居住地:兵庫県
診断年:2019年
※本体験談は、患者さん個人の経験に基づくものです。治療の経過や副作用、生活への影響には、個人差があります。医療的な判断や治療方針の決定の際には、必ず医師・医療従事者にご相談ください。
2019年、ミッキーさんはスキルス胃がんと膵臓がんという2つのがんが同時に見つかりました。それ以前にも難病や大きな事故による後遺症を経験しました。そんな彼の闘病生活を支えたのは、盲導犬の育成をサポートする「パピーウォーカー」としての活動でした。がんの告知を受け、精神的に落ち込む中でも、そばにいるパピー(盲導犬候補の子犬)の存在が心を軽くし、前を向く力を与えてくれたと言います。数々の困難を乗り越え、現在は「笑うこと」を大切にしながら、新たな社会活動にも挑戦するミッキーさんにお話を伺いました。
食事後の嘔吐から発覚した、2つのがん
私が最初に体の異変に気づいたのは、2019年のことでした。外出先で食事をした後に、吐いてしまったのです。そのお店の方から「一度、病院で診てもらった方がいいですよ」と勧められ、かかりつけの病院を受診しました。
もともと他の病気も抱えていたため、かかりつけ医にその旨を伝えると、「では、胃内視鏡検査をしてみましょう」ということになりました。検査の結果、見つかったのは胃がんで、医師からは手術が必要だと言われました。
そのことを家族に相談すると、「セカンドオピニオンを受けてみたらどうか」と勧められました。そこで、最初の病院で紹介状と資料をもらい、別の病院へ向かいました。
セカンドオピニオン先の医師は、資料を見るなり少し首をかしげ、「念のためCTを撮らせてもらえませんか」と言いました。その結果、なんと膵臓にもがんが見つかったのです。胃がんは悪性度の高いスキルス胃がん、そして膵臓がんはステージ3Aでした。
最初の病院では、胃がんのことしか話がなかったので、もしそのままセカンドオピニオンを受けていなければ、膵臓がんは見過ごされていたかもしれません。そう思うと、あの時CT検査を勧めてくれた医師には本当に感謝しています。
胃と膵臓、2つの手術を乗り越えて
胃がんが見つかっただけでもショックでしたが、続けて膵臓がんまで告知されたときは、さすがに衝撃でした。ただ、膵臓がんは手術ができること自体が幸運なケースも多いと聞いていましたし、医師から「どちらも手術で取りましょう」と言われたことで、腹をくくることができました。
私の家系は、親戚にもがんで亡くなった人が多かったのです。それに加え、私自身が24歳で難病の多発性硬化症を患い、47歳の時には事故で開頭手術を受けるなど、これまでにも大きな病気やけがを経験してきました。そうした経験から、「なったものは仕方がない」と、ある意味で達観している自分がいました。
治療は、セカンドオピニオンで訪れた病院で受けることにしました。がんセンターという選択肢もありましたが、自宅から車で20分ほどと通いやすく、家族の負担も考え、この病院に決めました。
2つのがんの手術を終えるまで、入院期間は1か月以上におよびました。入院後、まずは内視鏡でスキルス胃がんを切除し、その約1か月後に、今度は開腹手術をしました。膵臓の体尾部と脾臓を摘出する大きな手術でした。
退院後は、術後補助化学療法としてS-1という抗がん剤を服用し、放射線治療も併用しました。現在は定期的な経過観察のみで、膵臓の働きを助ける薬を毎日服用しています。
闘病生活を支えてくれたパピーの存在
私の人生を語る上で、盲導犬の育成をお手伝いする「パピーウォーカー」というボランティア活動は欠かせません。この活動を始めたのは、がんになる4年前の2015年のことです。
きっかけは、47歳のときに遭った交通事故でした。頭を強く打ち、開頭手術を受けた後、左半身に麻痺が残ってしまったのです。一時は寝たきりの状態で、リハビリを重ねてなんとか車いすで動けるようになりましたが、心はふさぎ込みがちでした。そんな私を見かねた家族が、「パピーウォーカーをやってみないか」と勧めてくれたのです。
もともと実家で犬を飼っていたこともあり、私はこの提案を受け入れました。生後2か月から1歳になるまでのラブラドール・レトリバーの子犬を預かり、社会性を身につけさせるのが私たちの役目です。
不思議なことに、パピーと暮らし始めてから、私の体はどんどん回復していきました。事故の後遺症でうまく回らなかったろれつがはっきりしてきて、歩行もスムーズになったのです。パピーたちはとても賢く、麻痺のある私の歩調に合わせて、ゆっくりと歩いてくれます。彼らとの毎日の散歩が、私にとって最高のリハビリになりました。
がんを告知されたのは、ちょうど3頭目のパピーを預かっているときでした。さすがに精神的に不安定になり、家族にきつく当たってしまうこともありました。再発率が高いがんだといわれ、「自分はがんで死ぬんだ」と思い詰めたこともありました。
しかし、そんな時も、足元に寄り添ってくれるパピーの存在が、私を救ってくれました。彼らの世話をしていると、自分の病気のことを忘れ、気持ちが前向きになれたのです。病院のフロアで歩行訓練を重ね、退院後すぐにパピーとの散歩を再開したときの喜びは、今でも忘れられません。
「笑うこと」で見つけた新しい生きがい
闘病中、家族に当たってしまう自分自身が嫌になり、悩んだ末に一人で暮らすことを決めました。娘はとても心配してくれましたが、私の決意を理解してくれました。
一人暮らしになり、最初は寂しさもありましたが、そばにはいつもパピーがいてくれました。彼らに話しかけているうちに、自然と笑えるようになっていたのです。
そんなとき、瀬戸内寂聴さんの「笑うことが大切」という言葉や、母がよく口にしていた「和顔施(わがんせ)」という仏教の教えを思い出しました。和顔施とは、笑顔で人に接することも尊い布施のひとつだ、という意味です。それから私は、意識して笑って過ごすようになりました。
パピーウォーカーの活動は今も続けていますが、犬を預からない期間もあります。そんな時に、インターネットで「おもちゃ病院」というボランティア活動を見つけました。壊れたおもちゃを修理する「おもちゃドクター」の活動です。手先は器用な方だったので、「これなら自分にもできるかもしれない」と参加することにしました。
今では月1回、おもちゃドクターとして活動しています。修理したおもちゃを子どもに手渡したとき、子どもやお母さんから「おっちゃん、ありがとう!」と言われると、本当にうれしい気持ちになります。
見返りを求めず、自分にできることをやっていく。そして、笑顔でいること。パピーウォーカーやおもちゃドクターの活動を通して、私は新しい生きがいを見つけることができました。
これからがんと向き合う方へのメッセージ
私自身、がんになる前に難病や大きな事故を経験していたため、精神的に打たれ強くなっていた部分はあったかもしれません。がんの告知を突然受け、すぐに「なったものは仕方がない」と受け入れるのは難しいと思います。
それでも、私が体験からお伝えしたいのは、以下のことです。
現状を受け入れてみましょう。
まずは、がんと診断された事実を冷静に受け止めることが、次の一歩につながると思います。「なってしまったものは仕方がない」と少しずつでも思えるようになると、気持ちが楽になります。
笑うことを忘れないでください。
笑うことは、心と体に良い影響を与えてくれます。つらいときこそ、意識して口角を上げてみてください。面白いテレビ番組を見る、好きなことに没頭するなど、自分が笑顔になれる時間を作ることが大切です。
何か夢中になれることを見つけてください。
病気のことばかり考えていると、気持ちは沈んでしまいます。私の場合はパピーウォーカーやおもちゃドクターの活動でしたが、趣味でも仕事でも何でも構いません。自分が夢中になれること、社会とつながれる「やること」を見つけることが、前向きに生きる力になります。
がんという病気は、確かに大変です。しかし、そこから得られる気づきも必ずあります。この記事が、今まさにがんと向き合っている方やそのご家族にとって、少しでも心を軽くするきっかけになれば幸いです。