写真はイメージです。(AIによる生成)プロフィール
お名前:大湊敏也(本名)
年代:60代
性別:男性
家族構成:妻と二人暮らし
仕事:退職済
がんの種類:腎細胞がん
診断時ステージ:ステージ3B
居住地:埼玉県
診断年:2020年
※本体験談は、患者さん個人の経験に基づくものです。治療の経過や副作用、生活への影響には、個人差があります。医療的な判断や治療方針の決定の際には、必ず医師・医療従事者にご相談ください。
突然の血尿をきっかけに、ステージ3の腎細胞がんと診断された大湊敏也さん。手術後4年間の平穏な日々の後に、肺、そして後、腹膜リンパ節へと2度の転移を経験します。しかし、大湊さんは冷静にその現実を受け止め、標準治療を信じて淡々と治療を続けてきました。深刻になりすぎず、日々の楽しみを大切にする、がんとの付き合い方についてお話しいただきました。
見たこともない真っ赤な血尿
2020年10月、仕事で横浜まで車で出かけ、長時間かけて帰宅した日のことです。トイレに行くと、今までに見たこともないような真っ赤な尿が出ました。長時間運転していたので、最初は膀胱炎か何かかと思いましたが、それにしてもあまりに鮮やかな赤色でした。
これはただ事ではないと感じ、翌日、糖尿病の治療で定期的に通っていた病院の泌尿器科へ駆け込みました。事情を話すとすぐに造影CT検査となり、その日のうちに腎臓に影があることがわかったのです。
数日後、正式に「腎細胞がん」との告知を受けました。ステージは3A。血尿が出たのは最初の1回だけで、その後は全く自覚症状がなかったため、自分ががんであるという実感はほとんどありませんでした。
転院、そして予期せぬ副作用
先生からは、「がんが下大静脈まで広がっているため、ここでの手術は難しい」と説明を受けました。そして、実績のある大学病院を推薦され、紹介状を書いてもらい、その足で向かいました。
大学病院でも改めて検査を受けたところ、診断はより深刻なステージ3B、「4の一歩手前」という状態であることがわかりました。幸い遠隔転移はなかったものの、腫瘍が大きすぎるため、すぐには手術ができないため、まずは抗がん剤でがんを小さくしてから手術をするという方針になりました。
治療は、免疫チェックポイント阻害薬のキイトルーダと分子標的薬のインライタの併用療法でした。2020年11月から治療を開始し、2回目の点滴を終えてしばらくした頃、体に異変が起きました。
久しぶりに会った娘から「パパ、顔が黄色いよ」と指摘されたのです。ひどい倦怠感は自覚していましたが、抗がん剤の副作用だろうと思い、深刻には考えていませんでした。しかしその翌日、ちょうど受診日だったので病院に行くと、肝臓の数値が異常に悪化しており「劇症肝炎に近い状態」だということがわかり、緊急入院となりました。がんの治療は中断し、まずは肝臓を治すため、ステロイドパルス療法が始まりました。
結局、肝臓の治療で1か月ほど入院し、その間、がんの治療はできませんでした。泌尿器科の先生も、がんを小さくできないまま手術することに不安を口にしていましたが、消化器内科の先生から「早く切るべきだ」と強く促され、2021年の2月、手術に踏み切ることになりました。手術は無事に成功し、腎臓を摘出しました。
腎細胞がんには、術後の補助化学療法として確立されたエビデンスのある治療法がないため、その後は3か月に一度の造影CTで経過を見ていくことになりました。
4年間の平穏と、再発の衝撃
術後、約4年間は再発もなく、平穏な日々を過ごしました。定期検査が近づくと「今回は大丈夫だろうか」と妻と心配し合いましたが、普段はがんのことを意識することはあまりありませんでした。糖尿病のインスリン注射や血糖値の方が気になるくらいで、自覚症状も全くありませんでした。
しかし、2024年の暮れ、定期検査のCTで肺に転移が見つかりました。4年間何事もなかっただけに、やはり再発のショックは大きいものでした。「体の中にまだがんが残っていて、何年経っても転移することがある」という事実は、最初の告知よりも重く感じられました。
幸い、転移したがんは手術で切除できる位置にあり、呼吸器外科で無事に取り除くことができました。
2度目の再発、そして放射線治療
肺の手術後、今度は後腹膜のリンパ節に再び転移が見つかりました。十二指腸や肝臓に接している場所で、手術は非常に難しいとのこと。そこで、定位放射線治療を行うことになりました。
2025年2月に治療を行い、3か月後の検査では、がん細胞が壊死していることが確認されました。治療はうまくいったようです。
標準治療と医師への信頼
私はこれまで、治療方針についてセカンドオピニオンを考えたことはありません。最初の病院の先生が「あそこに行きなさい」と大学病院を強く推薦してくれたこと。そして、大学病院のホームページで医師の経歴や病院の手術症例数などを確認し、信頼できると判断したからです。
また、がんに関する本も読みましたが、民間療法には頼らず、科学的根拠のある「標準治療」が一番だと思いました。自分で調べた情報と、先生方が示してくれる方針が大きくかけ離れていなかったこともあり、今の病院で治療を続けることに何の迷いもありませんでした。それでダメなら、仕方がない。そう思っています。
深刻になりすぎず、自分らしく
闘病生活において、妻の存在は非常に大きいものです。彼女は「あなたのせいで、いつもがんの心配をしなきゃいけない」と冗談めかして言いながらも、常に明るく接してくれます。深刻に悩まれるより、その方が私も気が楽です。
私たち夫婦は、あまり物事を深刻に考えない性質なのかもしれません。「なるようにしかならない。何か起きたら、その時に対応しよう」という気持ちが根底にあります。
また、私には車の運転という趣味があります。好きな車に乗ってどこかへ出かける。運転に集中している間は、がんのことを忘れることができます。それが良いストレス解消になっているのだと思います。
これからがんと向き合う方へのメッセージ
私の経験から、今がんと向き合っている方々にお伝えしたいことがあります。
信頼できる情報に基づき、標準治療を基本に考えてください。
インターネットには様々な情報が溢れていますが、私は公的機関(がん情報サービスなど)のサイトで情報を確認するようにしていました。民間療法に惑わされず、まずは科学的根拠のある標準治療について、主治医とよく相談することが大切だと思います。
深刻に考えすぎず、明るく過ごすことを心がけてください。
不安な気持ちは、体調に影響を与えることがあると聞きます。私自身、先のことを考えすぎず、「今日も生かしてもらった。明日も目が覚めたら、また一日を楽しく暮らそう」と思うようにしています。
希望を捨てないでください。
1日でも長く生きていれば、医学は進歩し、新しい治療法が見つかるかもしれません。希望を持ち続けることが、前向きな気持ちにつながると思います。