米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology: ASCO)2023 に参加しました


ASCO2023 会場の様子

今年も毎年シカゴで開催される米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology: ASCO)に参加してきました。
空港から直接、会場入りしましたが、医療従事者が集まる学会会場にも関わらず、一部のアジア人以外、誰もマスクをしていないことに驚きました。むしろ、マスクをしていることの方が、場違いな感じがあり、マスクを外さないことに勇気が必要でした。マスクに対するリテラシーの国際間差を感じるところから始まった今年のASCOです。


今年の肺がんの分野は、周術期治療が旬な学会と言ってよい年でした。
分子標的治療の代表である、EGFR変異を有する非小細胞肺がんの術後補助療法は、プレナリーセッション(その年に最も注目すべき演題)に選ばれており、術前・術後の免疫チェックポイント阻害剤を用いた臨床試験の結果が複数発表されました。
同時に、複数の製薬企業主体の新たな周術期治療の結果が発表されましたので、未解決な事項が沢山出来てしまい、臨床現場での交通整理の難しさを感じました。(多くの試験が標準的治療との比較試験になっていない事が原因で、解釈に時間やディスカッションが必要です)


EGFR遺伝子変異がある非小細胞肺がん患者さんの術後補助療法の試験を少し紹介します。


術後に標準的な補助化学療法を受けた後に、オシメルチニブを3年投与する群と標準的な補助化学療法後に観察する群に無作為化割付する試験の生存期間に与える影響が発表されました。


以前の発表では、無再発生存期間(再発までの期間)が大幅に改善されることが示されていました。今回の発表では、生存期間に関する発表が行われる予定であったので、再発後にEGFR-TKIを投与した場合においても、真の目標である生存期間も改善されるのかが、注目されていました(プレスリリースでは改善する事が報告されていました)。


結果、標準的な補助化学療法を受けた後に、オシメルチニブを3年投与する群が標準的な補助化学療法の観察群に比べ、統計学的有意に生存期間の延長が得られたことが示されました。しかし、観察群において再発後の治療にオシメルチニブが投与された患者さんは45%程度で、その他の患者さんは第1世代のEGFR阻害剤で治療されていました。


この臨床試験に参加した国々の中には、第3世代EGFR阻害剤が日常診療では使えない国が沢山あるという状況で、オシメルチニブを使って治療を行える日本は幸せな国であるとともに、本当の意味での国際的標準治療とは何だろうと考えさせられました。医学的見地からは、観察群で再発した患者さんに100%オシメルチニブが投与された場合の、生存期間の結果を知りたかったと思いました。


さて、シカゴは去年より更に活気を取り戻していましたが、物価は更に上昇していました。円安の状況のため、さらに物価高を感じました。世界規模で経済が安定し、戦争のない平和な世界に戻って欲しいと強く思いました。


瀬戸


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