近年、がん治療の精密化が進む中、肺がんに対する「遺伝子検査」の普及も急速に進んでいます。その実態については具体的な報告がなされておらず、肺がん患者の会ワンステップ(理事長:長谷川一男)などを中心に、株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンと、肺がん患者支援団体「アライアンス・フォー・ラング・キャンサー(ALC)」との共同で、「非小細胞肺癌患者におけるドライバー遺伝子検査実態調査~全国300病院のDPCデータ※予備的解析~」を実施し、2023年9月29日に全国200病院のDPCデータ予備的解析結果を白書化しました。
遺伝検査調査白書_第1.1版_20230929_A4LC.pdf
※DPCデータとは?
診断群分類包括評価は、日本における医療費の定額支払い制度に使われる評価方法。DPC(Diagnosis Procedure Combination;診断群分類)に基づいて評価される入院1日あたりの定額支払い制度で、DPC/PDPS(Diagnosis Procedure Combination / Per-Diem Payment System)と呼ばれる。通称はマルメとよばれています。
2019年以降も新規分子標的治療薬の登場、新規検査法の登場により、更にその実態を明らかにするための継続調査が行われました。
肺がん患者のDPCデータを2023年に行った調査によると、非小細胞肺がん患者の初回治療前に実施されるコンパニオン診断(遺伝子検査)で、複数の遺伝子を同時に調べる「マルチプレックス検査(多遺伝子検査)」の利用が急増していることがわかりました。
この「多遺伝子検査」は、がんの原因となる“ドライバー遺伝子”を一度に調べることで、患者一人ひとりに合った分子標的治療薬の選択肢を早期に見出すことができる画期的な手法です。
調査では、2023年に全国約300の急性期病院で診療された非小細胞肺がんの患者24,047人を対象に分析が実施されました。初回治療前に行われた検査を、検査項目数別に分類したところ、2019年時点では「EGFR」「ALK」「PD-L1」の3項目だけを検査するケースが最多でしたが、2022年には5項目、2023年には7項目以上を一度に調べる多遺伝子検査が主流になり、全体の約3割の患者がこの検査を受けており、単独検査に取って代わりました。

本調査の結果は、肺がん患者がより自分に合った治療を選べる時代であることを示しています。今後は、こうした検査をより多くの患者さんに提供できる体制整備と、検査結果を活用した治療方針の共有・理解促進が求められると同時に、患者さん自身も、自身の肺がんについて、知り、学び、適切な検査、医療に関心を持つことが重要と思います。
2025年7月1日継続調査白書化:https://alliance-for-lung-cance.com/project1/
柳澤