「Remember Girl’s Power !! 2023」Day2:若い世代にもっと知ってほしいがん検診、ネガティブなイメージを前向きに乗り越える励ましをくれるエンタメの力


  • [公開日]2023.11.07
  • [最終更新日]2023.11.07

【寄稿】文・写真:乃木 章

日本人の生涯で、2人に1人がかかる身近な病気であるがんのうち、国が検診を勧める肺がん、胃がん、乳がん、子宮頸(けい)がん、大腸がんなどは治療法も進歩し、早期発見すれば治る可能性が高いものになっています。

しかし、小児がん、AYA世代(15歳から39歳)のがんに有効な予防、検診方法はなく、これらのがんについては、有効な治療法・治療薬の開発、臨床試験が重要とされています。

啓発対象である若い世代は、がん=ネガティブなイメージが強いため、がん体験者を直視することはもちろん、がんを話題にすることを避ける傾向にあります。そこで、がん情報サイト「オンコロ」が2016年から開催しているのが、女性シンガー、アニソン歌手、アイドルを通したがん啓発イベントです。

毎回、ステージでパフォーマンスをするアーティストにしかない発信力を活かした「トーク&ライブ」では、がんと無縁のように見られる10〜20代のアイドルとがん体験者によるトークセッションが大きな反響を集めています。

2023年も通算8回目となる、小児がん・AYA世代(15歳~39歳)のがん、 臨床試験(治験)の啓発を目的とする女性アーティストによる日本最大級のチャリティーライブ「Remember Girl’s Power !! (オンコロライブ) 2023」が、東京・池袋で開催されました。


Remember Girl’s Power !! (オンコロライブ) 2023実行委員(がん体験者):鳥井 大吾氏

同イベントは豊島区との共催で、株式会社サンシャインシティの協力を得て、9月2日と9月3日は池袋西口公園野外劇場グローバルリング シアター、9月9日と9月10日はサンシャインシティ噴水広場にて開催されました。総合司会は、がんサバイバーでフリーアナウンサーの笠井 信輔さんが務めました。


Remember Girl’s Power !! (オンコロライブ)総合司会:笠井 信輔さん(がん体験者)

寄付付きの優先席はあるものの、いずれの会場もパブリックスペースで、リアルタイムで動画配信もされ、広く一般の方への啓発を目的としていました。

■Day2:9月3日は池袋西口公園野外劇場グローバルリング シアターで開催

進行アシスタントは、元「夢みるアドレセンス」メンバーの荻野 可鈴さんが務め、アイドルグループからは「Gran☆Ciel」、「Appare!」、「I MY ME MINE」、「クマリデパート」、スペシャルゲストとして2013年に境界悪性卵巣腫瘍のため両卵巣・子宮を全摘出したタレント・アーティストの麻美 ゆまさんが出演してパフォーマンスを披露しました。


進行アシスタント:荻野 可鈴さん

■Gran☆Ciel

オープニングアクトは壮大、荘厳、偉大、そして広々としたという意味のGran(グラン)と、空を意味するCiel(シエル)を合わせたグループ名で、大空のように爽やかな楽曲を中心に存在感あるギターロックを展開する「Gran☆Ciel」。

天音 七星さん、夢咲 りりあさん、濱田 菜々さん、牧野 真琴さん、望月 希美奈さん、上丘 鈴華さん、小林 夢叶さんの7人がメンバーです。

当日は「願いYou&I」、「Future」、「Message!」、「つなぐ」の4曲を元気いっぱいに披露しました。

■Appare!

続く「Appare!」は、朝比奈 れいさん、橋本 あみさん、永堀 ゆめさん、藤宮 めいさん、七瀬 れあさん、藍井 すずさん、工藤 のかさんの7人のグループ。とにかく楽しいライブパフォーマンスに定評があり、6月開催の『アイドルと学ぶ「小児がん・AYA世代のがん、臨床試験、がん検診」のことトーク&ライブ Vol.2』に続いての出演でした。

当日はSNSでも話題になった「ぱ ぴ ぷ ぺ POP!」、「なんとかなーれファンファーレ」、「スカイラインファンファーレ!」、「Summer spit!」、「絶対猛進デイドリーマー」、「ゴールデンタイム」の6曲を元気いっぱいに披露しました。

■I MY ME MINE

2021年6月に神田明神ホールにてデビューした「I MY ME MINE」は、櫻井 もえさん、橘 舞花さん、茉白 そらさん、早瀬 ゆいさん、松山 綺利さん、百千 もねさん、雪白 ひなさん、小森 ひなこさんの8人グループ。

当日は、「ハッピーデリバリー」、「MAMAMAMA☆マッスルママ」、「アピバグハッピーヒロイン」、「恋はプリズム」、「アイマイスターマイン」の5曲を披露しました。

■クマリデパート

トリを務めた「クマリデパート」は、サクライケンタのプロデュースのもと「世界のこころのデパート」をコンセプトに活動する、水色担当の早桜 ニコさん、ピンク色担当の優雨 ナコさん、赤色担当の小田 アヤネさん、ホワイト担当の楓 フウカさん、黄色担当の山乃 メイさん、ミントグリーン担当の七瀬 マナさんの6人組アイドルグループ。今年3月には東京・日本武道館での単独公演を開催という夢のステージを掴み取りました。

当日は、「サクラになっちゃうよ!」、「サイエンス倶LOVE」、「ネコちゃんになっちゃうよ〜」、「ねおぶくろかるちゅあしてぃ」、「SUN百6じゅ〜GO!日ッチ☆」、「2060年チェリーブロッサムの旅」の6曲を安定度の高いパフォーマンスで披露しました。

■麻美 ゆま

スペシャルゲストは昨年に続いて出演してくれた麻美 ゆまさん。「恵比寿マスカッツ」メンバーとしても活躍していた2013年に境界悪性卵巣腫瘍のため両卵巣・子宮を全摘出した辛い状況を乗り越えたエピソードを披露。

「辛さを前向きになって乗り越えたら強い自分が待っていた」と過去を振り返り、なんとなくではなく、「明日はこれしようかな?」と意識した日々を過ごしてほしいと呼びかけました。

当日は、「Don’t Look Back」、「Ceres」、「Re Start~明日へ~」の3曲を披露しました。

■啓発セッション:池袋保健所 佐藤 信博

啓発セッションでは豊島区役所・池袋保健所の佐藤 信博さん、近畿大学病院がんセンター長の中川 和彦先生が登壇。


豊島区役所・池袋保健所の佐藤 信博さん


近畿大学病院がんセンター長の中川 和彦先生

豊島区ではがん検診を無料で受けられるチケットを対象者に送っています。がん検診は体の調子が悪いから受けるではなく、がんの早期発見のためのものであり、ステージ1、2の人は自覚症状がないからこそ、早期発見で治る可能性が高い内に発見することが必要になります。また、一度受ければ安心ではなく、毎年受診し、要精密検査となった場合は必ず精密検査を受けることが大切です。

また、豊島区では厚生労働省の指針で定めるがん検診だけでなく、区独自で実施している検診に、B型・C型肝炎ウイルス調査、前立腺がん検診、胃がんリスク評価があります。

中川先生も「40歳以上の方からが、主ながん検診の対象になる」と説明。女性が対象の子宮頸がん検診だけは20歳から受けることができます。ワクチンが予防に有効であることは世界的に証明されているので、「ぜひ受けてください」と強く訴えました。

■共催セッション:可知 健太さん


3Hクリニカルトライアル株式会社 執行役員の可知 健太さん

チャリティーライブを共催として支える企業や団体を紹介する共催セッションでは、被験者募集 (PRO)からCRO、患者調査・疾患啓発・DTCといったヘルスケアマーケティング、食品ヒト臨床試験に至るまで患者さんと企業とのコミュニケーションを支援する「3Hクリニカルトライアル株式会社」執行役員の可知 健太さんが登壇。

同社はヘルスケア情報メディア運営、ヘルスケア・システム開発運営、治験・臨床試験関連サービスの大きく3つの事業展開をしています。可知さんはとくに情報を発信することの重要性を訴えました。例えば、治験・臨床試験は製薬会社が実施するため、病院の先生もどうしたら受けられるかを知らないこともあり、過去には藁にもすがる思いの患者さんから相談も受けたことがあるそうです。

■「体は抗がん剤が、心はアイドルが治してくれた」あるがん体験者の実話

最後は、恒例となる中川 和彦先生(近畿大学病院がんセンター長)からの感謝状手渡し、実行委員長の柳澤 昭浩さんの挨拶で締めくくられました。


感謝状を手渡す中川 和彦先生


クロージングの挨拶をする実行委員長の柳澤 昭浩さん

柳澤さんは、コロナ禍が明けて、たくさんの出演ステージがある中、オンコロの啓発ライブ出演を選んでくれたアイドルやアーティストの方への感謝を述べました。そして、「アイドルやアーティストの方にこのライブに出演して良かった」と言ってもらえることに対し、啓発ライブを続けてきた喜びをあらわにしました。

また、最後の締めくくりとして、啓発ライブのスタッフにはがん体験者がおり、その人はいわゆるドルオタで、体は抗がん剤に治してもらったけど、アイドルの握手会に行くために抗がん剤治療を頑張れたことで、「心はアイドルに癒された」エピソードを披露。そう言った観点からも啓発ライブの趣旨に1人でも興味を持ってくれたら嬉しいと会場に呼びかけました。

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