【寄稿】文・写真：乃木 章
日本人の生涯で、2人に1人がかかる身近な病気であるがんのうち、国が検診を勧める肺がん、胃がん、乳がん、子宮頸（けい）がん、大腸がんなどは治療法も進歩し、早期発見すれば治る可能性が高いものになっています。
しかし、小児がん、ＡＹＡ世代（15歳から39歳）のがんに有効な予防、検診方法はなく、これらのがんについては、有効な治療法・治療薬の開発、臨床試験が重要とされています。
啓発対象である若い世代は、がん＝ネガティブなイメージが強いため、がん体験者を直視することはもちろん、がんを話題にすることを避ける傾向にあります。そこで、がん情報サイト「オンコロ」が2016年から開催しているのが、女性シンガー、アニソン歌手、アイドルを通したがん啓発イベントです。
毎回、ステージでパフォーマンスをするアーティストにしかない発信力を活かした「トーク&ライブ」では、がんと無縁のように見られる10〜20代のアイドルとがん体験者によるトークセッションが大きな反響を集めています。
2023年も通算8回目となる、小児がん・AYA世代（15歳～39歳）のがん、 臨床試験（治験）の啓発を目的とする女性アーティストによる日本最大級のチャリティーライブ「Remember Girl’s Power !! （オンコロライブ） 2023」が、東京・池袋で開催されました。
同イベントは豊島区との共催で、株式会社サンシャインシティの協力を得て、9月2日と9月3日は池袋西口公園野外劇場グローバルリング シアター、9月9日と9月10日はサンシャインシティ噴水広場にて開催されました。総合司会は、がんサバイバーでフリーアナウンサーの笠井 信輔さんが務めました。
寄付付きの優先席はあるものの、いずれの会場もパブリックスペースで、リアルタイムで動画配信もされ、広く一般の方への啓発を目的としていました。
■Day1：9月2日は池袋西口公園野外劇場グローバルリング シアターで開催
司会アシスタントは元notallメンバーでリーダーであった佐藤 遥さんが務め、アイドルグループからは「Peel the Apple」、「マジカル・パンチライン」、「メイビーME」、「MyDearDarlin’」、スペシャルゲストとして、舌がん・食道がんサバイバーで歌手の堀 ちえみさんが出演してパフォーマンスを披露しました。
■Peel the Apple
トップバッターの「Peel the Apple」は、26時のマスカレイド新メンバーオーディションから誕生。
惜しくもファイナリストで終わったメンバーで立ち上げたアイドルグループで、浅原 凜さん、小田垣 有咲さん、黒嵜 菜々子さん、佐野 心音さん、春海 りおさん、広島 世那さん、松村 美月さん、南 るなさん、山崎 玲奈さんの9人がメンバーです。
当日は「VIVA夏サンシャイン」、「リンゴの皮をむくな!～Don`t Peel the Apple～」、「Happyyyy Pop!」、「青春グラフィティー」、「Va!Vamos!」の5曲を元気いっぱい披露しました。
■マジカル・パンチライン
続く「マジカル・パンチライン」は、世界中の毎日をキラキラハッピーにする！！をコンセプトに プロデューサー兼リーダーで白色担当の沖口 優奈さん、衣装デザイン担当でピンク担当の吉澤 悠華さん、元TEENSモデルで赤色担当の益田 珠希さん、元ハコイリ♡ムスメで緑色担当の山本 花奈さん、ウクレレシンガーで青色担当の宇佐美 空来さんの5人組アイドルグループ。
当日は宇佐美 空来さんが欠席したものの、「Melty Kiss」、「めろめろーりんぐ」、「Shiny Shoes」、「ONE」、「もう一度」の5曲を綺麗な歌声で披露してくれました。
■メイビーME
”女の子が憧れる王道かわいいアイドル”をテーマに、アイドルらしいポップな曲調と同性から共感を呼ぶ重めな歌詞が特徴の「メイビーME」は、石原 すずかさん、大塚 のりかさん、新庄 愛さん、谷 あやかさん、成瀬 かのんさん、藤原 奈穂さん、宮花 ももさんの7人がメンバー。
当日は成瀬 かのんさんが欠席でしたが、「Fabulous Days」、「Be ambitious!!!」、「ラミラミLOVE ME BABY」、「ときめきchu!のちどきどき」、「曖昧あいでんてぃてぃ」の5曲を披露しました。
■MyDearDarlin’
トリを務めたのは、“令和新時代の王道アイドル”をコンセプトに2020年1月にデビューした「MyDearDarlin’」は、是枝 優美さん、咲真 ゆかさん、東條 ゆりあさん、葉山 かえでさん、水城 梓さん、夢実 あすかさんの6人がメンバー。
当日は、「君色ダイアリー」、「アイスクリーム」、「一生涯オリジナリティ」、「MDDシンドローム」、「FLOWER」のがん体験者への応援メッセージともとれる5曲を披露しました。
■堀 ちえみ
スペシャルゲストは、舌がん・食道がんサバイバーで歌手の堀 ちえみさん。娘さんの励ましで手術とリハビリを乗り越え、今で日常会話だけでなく、ライブを開催できるまでに快復しました。
当日は、往年の堀 ちえみ親衛隊（ファン）も会場に駆けつけ、総合司会の笠井さんも「皆さんで言うところの、推しを何十年通し続けているんですよね」と会場に呼びかけました。
■啓発セッション：小児がんサバイバー・首藤 詩帆
啓発セッションで登壇した、小児がんサバイバー・首藤 詩帆さんは、4歳の時に急性リンパ性白血病に罹患。小児がんは寛解してからも、抗がん剤や放射線治療などによる副作用が発症するケースが多く、首藤さんも慢性肝障害や脳への放射線の影響といった晩期合併症に悩まされています。それでも、作業療法士として働く傍ら、小児がん患者を対象とした「スマートムンストンキャンプ」のボランティアリーダーを務める姿が印象的でした。
■共催セッション：山本 信之理事長
同イベントを初期の頃から共催として支えている、がん治療を開発・啓蒙するための認定特定非営利活動法人 西日本がん研究機構（WJOG）」山本 信之理事長が登壇。がんは日本人の2人に1人が一生のうちになんらかのがんになると言われており、WJOGでは肺がん、乳がん、胃がん、大腸がんの４つの研究をしています。
山本理事長は、外科治療、放射線治療、抗がん薬などがん治療の選択肢が増える中、目の前の患者にベストな治療が何か、臨床疑問を明らかにするための臨床研究の重要性を訴えました。
■「自分以外の人を応援するのはかっこいい、尊い」
最後は、恒例となる中川 和彦先生（近畿大学病院がんセンター長）からの感謝状手渡し、実行委員長の柳澤 昭浩さんの挨拶で締めくくられました。
柳澤さんは「推し（自分以外の人）を応援することはかっこいい、尊いですよね。このイベントは、ここから見えない人たちを応援するものです。自分が楽しむために、推しの幸せのために、そして推しがこのイベントに出てくれた趣旨をちょっと思い浮かべていただけたら」と、がん患者やその家族、支えるすべての人たちに想いを馳せてほしいと呼びかけました。
