講演タイトル:『大腸がん』
演    者:吉野 孝之 先生(国立がん研究センター東病院 消化管内科長)
日    時:8月24日(金)
場    所:日本橋ライフサイエンスハブ8F D会議室

今月は、大腸がんをテーマにご来場頂きました。

クローズドセミナーであるため全ての情報は掲載できませんが、ポイントとなる情報をお伝えしていきます。

今回は、「大腸がんの基本知識」、「切除不能大腸がんの治療」「術後補助化学療法」「大腸がんの治験情報」を中心にご講義頂きました。

大腸がんの基本知識

大腸がんは近年急激に増加しています。2017年の罹患数予測は約13万人で、男女を合計した数では1位になります。(国立がん研究センター がん情報サービスより引用)
死亡率は、男性では第3位、女性では第1位であり、依然として死亡率が高いがんです。(国立がん研究センター がん情報サービス「がん登録・統計2015」より引用)

治療方針を左右するのは「根治切除ができるか、できないか」だと先生は仰います。それにより、治療の目的も変わります。


「大腸がんの治療方針」

また、病期(ステージ)により治療が変わり、ステージ0の場合、内視鏡になります。Ⅰ・Ⅱは腹腔鏡などの手術、Ⅲは手術+術後化学療法、Ⅳは基本的には抗がん剤となります。

切除不能大腸がんの治療

次に切除不能大腸がんの治療について教えていただきました。

切除不能大腸がんの一次治療・二次治療


「切除不能大腸がんの鍵となる薬」
まず、切除不能大腸がんの一次治療二次治療では表の①~⑥の薬を使用します。最も良いと思う治療を先におこない、効かない場合は二番目に良いと思われるものを選びます。

そして、これらの薬を最低二つ組み合わせます。一次治療と二次治療は、FOLFOXとFOLFIRIに分子標的薬をのせるものが基本となります。


「切除不能大腸がんの一次治療・二次治療」


「各治療法の特徴と長所・短所」

また、FOLFOXとFOLFIRIでは発現しやすい副作用が違います。最初の治療の方が通常は治療期間が長くなり、個々の生活スタイルなども考慮して治療を組み立てる必要があります。

ゼローダの特徴的副作用である手足症候群については、痛みで服薬を悩む際は服薬を止める、「まよったら、飲むな」を合言葉に!と先生は仰いました。

休薬すると、効果が無くなるのではないかと心配して我慢して服薬を続け、日常生活に制限を来す方もいらっしゃるそうです。しかし、適切な減量・休薬・遅延では治療効果を損ねない事が証明されているそうです。

切除不能大腸がんで使用する分子標的薬にはベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブがあります。
治験の結果から、これらの分子標的薬は大腸がんの初発部位による使い分けが分かってきているそうです。

横行結腸・上行結腸・盲腸など左腹部に発生したものは、抗EGFR抗体が効きやすいと言われ、ベバシズマブが良いかもしれないそうです。

下行結腸・S状結腸・直腸など右腹部に発生したものは、パニツムマブ、セツキシマブが良いかもしれないそうです。

大切なことは初発部位と遺伝子検査だそうです。
まとめとして、切除不能大腸がんの一次治療、二次治療では以下の通りです。

1.FOLFOX(XELOX)とFOLFIRIはどちらからはじめても治療成績は変わらない
2.RAS遺伝子野生型だと、ベバシズマブとセツキシマブ/パニツムマブはどちらからはじめても治療成績は変わらない
3.二次治療は、一次治療で使わなかった薬を使う
4.どちらからはじめるかは、副作用の種類で決めることが多い(例えば脱毛が嫌な場合はFOLFOXからスタート、手先を使う職業なのでしびれは困る場合はFOLFIRIからスタート、中心静脈ポートを作りたくない場合はXELOXからスタート、処方した薬を指示通り服用すること(内服コンプライアンス)に自信がない場合はFOLFOXもしくはFOLFIRIからスタートするなど。)

切除不能大腸がんの三次治療以降


「切除不能大腸がんの鍵となる薬」
切除不能大腸がんの三次治療、四次治療では表の⑦、⑧の薬を使用します。両者を比較したデータはないが、治療効果はほぼ同等と思われるそうです。

レゴラフェニブ(スチバーガ®)は経口マルチキナーゼ阻害薬で、複数のキナーゼ(基質にアデノシン三リン酸を導入する反応を触媒する酵素)を阻害するもので毒性も多彩です。

ここでも、副作用の手足症候群について、痛みを感じた場合は適切な減量・休薬がなによりも重要であると先生は仰いました。副作用についてはレゴラフェニブがTAS-102より強いそうです。

術後補助化学療法

術後補助化学療法とは、目では見えない微小ながんを標的とした治療です。具体的には根治手術が行われた後に、再発を抑える目的で行われる化学療法です。

全員に術後補助化学療法が必要という訳ではなく、ステージⅡ~切除可能なステージⅣの患者さんが適応となります。

がんが再発した場合、約70%は切除不能となってしまいます。切除不能とは=治らないということで、治療目的が根治ではなく延命治療となります。
術後補助化学療法は、今、治る人はその可能性を上げるためにも大切な治療となります。

術後補助化学療法をまとめると、以下の通りです。

・FOLFOXもしくはXELOX療法を行うのが標準で、オキサリプラチン有害事象等を許容できない場合は5FU系単剤(ゼローダ、UFT+ユーゼル、5FU+LV(点滴))。
・いずれの治療も半年間施行するのが標準
・基本的にイリノテカン(FOLFIRI療法)、分子標的治療薬は使用しない。(有効性が証明されていない)
・ゼローダは1日2回食後内服でコンプライアンス向上が期待できるが、手足症候群などの副作用がしばしば問題となる。

進行中または最近結果の出た治験・臨床試験

進行中または最近結果の出た治験・臨床試験では「TRIBE試験」という、一次治療としてFOLFOXIRI(5FU、オキサリプラチン、イリノテカン)+ベバシズマブとFOLFIRI+ベバシズマブのどちらが良いかを直接比較するものです。

結果はFOLFOXIRI+ベバシズマブの方が成績は良かったが、副作用も強くなったそうです。
また、プレシジョンメディシンについては以下の表をご参考下さい。


「大腸がんのプレシジョンメディシン」

また、質疑応答ではMSI検査はどこで受けられるか、がんの遺伝性はどうか、大腸がんと糖尿病の関係はどうか、などの質問が挙がりました。

MSI検査とは、マイクロサテライト不安定性検査というもので、リンチ症候群(遺伝性大腸がんのひとつ)の補助診断として行われる検査です。この検査は産学連携全国がんゲノムスクリーニング事業「SCRUM-Japan GI-SCREEN」Webサイトに無料で受けられる施設を掲載しています。

がんの遺伝性に関しては、家族4人の内2人ががんになるのは普通で、遺伝性を疑うのはがん種のバリエーションがなく(家族全員が大腸がんなど)、子供・孫につれて発症が若くなるなら疑うそうです。

大腸がんと糖尿病の関係は、大腸がんが治っている場合は血糖値に関しては一般の方と変わらないそうです。

当日ご聴講された方々より、「とても分かりやすく、勉強になった」「様々な情報が詰まっており、あっという間の1時間だった」「先生のお話に勇気が貰えた」など、多くのご感想が寄せられました。

吉野先生、ご参加された皆様、本当にありがとうございました。

(赤星)

9月28日(金)は、国立がん研究センター 副院長 藤原 康弘 先生をお迎えし、『臨床試験』をテーマにご講義いただきます。

次回の会場は「日本橋ライフサイエンスハブ8F D会議室」です。皆様のご参加をお待ちしております。

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