講演タイトル:『頭頸部がん』
演    者:岡野 晋 先生(国立がん研究センター東病院 頭頸部内科 医員)
日    時:4月27日(金)
場    所:日本橋ライフサイエンスハブ8F D会議室

今月は、頭頸部がんをテーマにご来場頂きました。

クローズドセミナーであるため全ての情報は掲載できませんが、ポイントとなる情報をお伝えしていきます。

今回は、「概論」、「標準治療」「免疫療法のトピック・今後の展望」を中心にご講義頂きました。

鎖骨から上・脳から下のがん、頭頸部がん

まず、「概論」では、 頭頸部がんの概論 と 薬物療法の概論 を教えて頂きました。
頭頸部とは、鎖骨から上・脳から下を指します。主な領域は口腔(舌、歯肉、口腔底、頬粘膜、口蓋)、咽頭(上咽頭・中咽頭・下咽頭)、喉頭、鼻腔、副鼻腔、甲状腺、唾液腺、頸部食道、気管などです。なお、脳や脊髄、眼窩内などは除きます。

ほとんどが扁平上皮がんといわれる組織型ですが、発生部位によりがんの性質が異なるため部位別の治療方針が必要です。発生頻度は全がん種の5%程度と考えられており、罹患率・死亡率共に増加傾向にあります。

また、リスク因子としては喫煙で5~25倍、飲酒で2~6倍、喫煙と飲酒で15~40倍と言われています。さらに上咽頭がんの発症に関与しているものとしてEBV(Epstein-Barr Virus)、中咽頭がんの発症に関与しているものとしてHPV(Human Papilloma Virus)があります。
これらウイルスが原因のものは、放射線及び薬物療法がよく効き、予後も良好であるそうです。

頭頸部がんの薬物療法

薬物療法の概論では、殺細胞薬(従来の抗がん剤と呼ばれるもの)・分子標的薬免疫チェックポイント阻害薬について教えて頂きました。

治療の基本的な考え方としては、遠隔転移の有無で治療方針が異なるそうです。遠隔転移のないものは、根治可能な病期と見なされ手術療法と放射線療法をメインに薬物療法を加えるか検討します。遠隔転移のあるものは、根治不能な病期となり、薬物療法がメインになります。

10、15年前は病院ごとに治療方針は違いましたが、今はどの病院でも基本的な標準治療から外れることはないそうです。

また、代用音声や手術(喉頭摘出)、化学放射線療法の問題点もご紹介頂きました。
代用音声は、下咽頭がんや喉頭がんで喉頭摘出手術を受けた方が何らかの方法で(食道や器具を用いて)声を得て話す方法です。ご自身の努力により、発声されている様子を動画で拝見させて頂きました。

手術(喉頭摘出)、化学放射線療法の問題点では、手術では音声・言語機能の廃絶、嗅覚脱失、鼻をすすれない、永久気管口からの乾燥や出血の恐れがあります。化学放射線療法では、嚥下機能の低下、味覚障害、四肢末梢のしびれ、2次発がんの危険性などがあります。
どちらを取るかは、患者さんの年齢や日常生活などでご本人が決めるしかないそうです。

局所進行扁平上皮がんの標準治療

次に、「標準治療」については局所進行扁平上皮がんに対するものと再発・遠隔転移扁平上皮がんに対するものをご紹介頂きました。

局所進行例では、標準治療はCDDP(シスプラチン)-RT(放射線療法)、代替治療としてCetuximab(セツキシマブ)-RTで新規治療にも期待できます。再発遠隔転移例では、標準治療はCDDP+5-FU(フルオロウラシル)+Cmab(セツキシマブ)、Pt(プラチナ)製剤不能・不適例にNivolumab(ニボルマブ)、病勢に応じてPTX(パクリタキセル)+Cmabです。

その他、個々の状況により、治療目標を立てて症状が緩解した例を幾らかご紹介して頂きました。先生は「必ずしも標準治療から外れてはいけないという事はない。なぜこの人にこの薬を使うのか考えて選ぶ事が大切である。」と仰いました。例えばプラチナ耐性(プラチナ系製剤が効かない)があり、急速に症状が進行している患者さんの治療目標は、生存期間を延ばすというより病勢をコントロールする事が目的となります。

ニボルマブなどの免疫チェックポイント阻害剤は3~5か月経たないと効果が分かりにくいものです。一方殺細胞薬はすぐに効果が出やすいものです。(※個人差はあります)このような患者さんにはニボルマブでは待てません。パクリタキセル+セツキシマブを用いることにより、治療開始1週目で症状が緩解しました。

あくまで標準治療に沿って治療方針を決めるが、その患者さんの症状が待てるものか否か、治療歴や既往歴はどうかなど何を目的に治療方針を決定するかが大切になる、と先生は仰いました。

頭頸部がん治療の今後の展望

免疫療法について

最後に「免疫療法のトピック・今後の展望」では免疫療法では有害事象(固定薬疹、副作用の悪化)と治療効果、偽増大(Pseud-progression)、免疫療法(IO)後の化学療法について、また今後の展望では免疫療法、プレシジョンメディシン、光免疫療法についてご紹介頂きました。

免疫療法では免疫関連有害事象という殺細胞薬にはなく、自己免疫と関わりが深い副作用が発生します。これらには発疹、胃腸障害(下痢・食欲不振)、甲状腺機能障害、間質性肺炎、などがあります。万が一これらの有害事象が発生すると、投薬を中止してしまう病院もあるそうですが、きちんとコントロールすればがんが消えることもあるので中止をしないで欲しい、と先生は仰います。有害事象が発生すると治療効果も高い可能性があるそうです。

偽増大とは画像上でがんが大きくなったかのように見える反応です。その後緩やかに小さくなっていきますが、本当の増大との判別は難しいので慎重にすべきです。ポイントとしては、体調や症状が悪化しなければ偽増大の可能性があるので、治療を継続することだそうです。

また、免疫療法後の化学療法は有用な可能性があるそうです。使用する薬剤の順番が大切であり、ニボルマブの後に殺細胞薬で劇的に効くこともあるそうです。

今後の展望では、免疫療法関連の臨床試験が多数進行しているそうです。

プレシジョン・メディシンについて

プレシジョン・メディシンでは実現間近だそうです。唾液腺がん(分泌がん)にNTRK融合遺伝子発現が多いことが分かりました。NTRK融合遺伝子陽性例にはTRK阻害剤が著効である臨床試験の結果が示されました。また、唾液腺導管がんにはHER2とAR(アンドロゲンレセプター)も発現が多い事が分かったそうです。HER2陽性例にはTrastuzumab(トラスツズマブ)が有効、AR陽性例にホルモン療法が有効であるということも紹介されました。

光免疫療法について

現在注目されている最新治療である光免疫療法の解説では、概要・臨床試験結果・対象患者さんについて説明がありました。光免疫療法とは正常細胞に害を与えずにがん細胞のみを死滅させる事ができます。皮膚転移症例や頸部リンパ節転移症例での臨床試験結果をご紹介頂き、「期待ができる治療法である」と仰いました。

しかし、この治療法の対象患者さんには幾らか条件があり、全員の方に効く訳ではないそうです。

まとめとして、
薬物療法がなくなり、緩和ケアを選んで終わる病院があるかもしれないが、患者さんご本人がお元気でやる気があれば、がん拠点病院で改善する可能性もあるそうです。復活して長期生存の方もいるそうなので、諦めずに問い合わせて欲しいと仰っていました。

セミナーの質疑応答

質疑応答の時間では、「光免疫療法ができる病院はどこか」「腺様嚢胞がん(ACC)の抗がん剤は何が良いか」「勧められる病院の見分け方は」等の質問にお答え頂きました。

現段階では光免疫療法は治験段階であり、また治験の被験者募集は2018年5月25日時点で終了しております。腺様嚢胞がんでは、シスプラチンが勧められるがそれで効かない場合は免疫療法にかけてみることも有りではないかと仰っていました。HER2陽性の方もいるので、遺伝子検査をしてみるのも良いかもしれません。

病院の見分け方は、件数が多いことが一番の指標になるそうです。またJCOG頭頸部がんグループなどへの参加施設は一定の条件を満たしていないと参加できないため、病院選びの参考になるとのこと。

当日ご聴講された方々より、「概論から光免疫療法まで短時間で整理できた」「自分のがんについて情報が少なく、もやもやしていたが非常に詳細な説明を聞くことができ、とても良かった」「明確で分かりやすく、希望がもてる講演で元気が出た」など、多くのご感想が寄せられました。

先生、ご参加された皆様、本当にありがとうございました。

5月25日(金)は、武蔵野徳洲会病院 オンコロジーセンター長・副院長 佐々木 康綱 先生をお迎えし、『乳がん』をテーマにご講義いただきます。

次回の会場は「日本橋ライフサイエンスビルディング 2F 201会議室」です!いつもの会場とは違いますので、お間違いのないようにして下さい。皆様のご参加をお待ちしております。

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