腎臓がん(腎細胞がん)に対する治療

がんの治療を検討するときは臨床病期に沿った形で治療が選択されます。進行がんと早期がんではがんの広がりが異なりますので、その都度、臨床病期と患者さんの全身状態を鑑みて治療を決定します。

腎臓がん(腎細胞がん)に対する治療も例外ではなく、日本においてはたとえば下記のような日本泌尿器科学会のガイドラインに沿って治療が行われることが一般的です。(医師によっては、アメリカやヨーロッパのガイドラインも参考にして治療を行います。)


(出典:日本泌尿器科学会編「腎診療ガイドライン」 2011年版 金原出版)

腎臓がん(腎細胞がん)に対する治療の特徴としては、とにかく手術によって腫瘍を取り除くことが重要であるということです。通常、多くのがんでは転移をしている段階では原発巣の手術をしません。なぜならば原発巣をとってもあまり意味がないためです。しかし、腎臓がん(腎細胞がん)の場合は、多種多様な化学物質(サイトカイン)を出すという性質などから、たとえ転移があっても原発巣をとるということが特徴的です。(非常に早期のがんには、凍結療法やラジオ波焼灼術が行われることもあります)

また、もうひとつの特徴としては、腎臓がん(腎細胞がん)はいわゆる抗がん剤が効かないという点です。腎臓は体の毒素や不要物を除去する役割を担っており、腎臓がん(腎細胞がん)は抗がん剤全般に耐性があるのです。さらに、放射線療法への感受性も低いため、あまり多くは行われません。

腎臓がん(腎細胞がん)に対する薬物療法としては、古典的な免疫療法インターフェロン)、分子標的薬、新しい免疫療法薬(免疫チェックポイント阻害薬)などが主なものになっています。

腎臓がん(腎細胞がん)に対する外科的治療

腎臓がん(腎細胞がん)は化学療法や放射線療法に抵抗性を示すので、可能な限り手術による腫瘍の摘出を行います。Ⅳ期、つまり進行した癌に対しても可能であれば摘出術を行い、転移巣に対しては放射線療法や分子標的薬を併用することによって予後を改善できる可能性があります。

1)根治的腎摘出術
根治的腎摘出術では腎臓全て、Georta筋膜、腎臓の周囲にある脂肪組織を1つの塊として摘出します。腫瘍の部位や大きさによっては(腎臓の上にある)副腎を合併切除することもあります。また、リンパ節や腎静脈、下大静脈などの主要静脈にまで進展している場合はそれらもできる限り切除を行います。

腎臓がん(腎細胞がん)ではステージⅣなどの進行例であっても可能であれば腎摘出術を行います。その後に、可能な範囲で転移巣切除を行い、薬物療法を続けて行うこともあります。腎摘出術は最近では鏡視下手術(体に穴をあけて内視鏡や鉗子を挿入して行う手術)が行われることが増えており、比較的患者さんに与えるダメージが少なく抑えられるようになってきました。

2)腎部分切除術
腎臓がん(腎細胞がん)の手術においては、可能ならば部分切除術を行うことが一般的です。それは、できる限り腎機能を温存した方が、長く生きられることが分かっているためです。

腫瘍の範囲を特定し、腫瘍の周りを正常な腎臓の組織も少し含めて切除、核出することで癌細胞の残存を防ぎつつ腎臓を温存します。基本的にがんのコントロールという意味では同等であり、可能な限り部分切除が試みられます。

部分切除が可能かどうかを決める因子として代表的なものは、腫瘍の部位と大きさです。腫瘍が腎臓の中心部に位置するような場合は、部分切除は難しくなりますし、反対に、外側に飛び出しているような場合は比較的手術しやすいのです。

腎臓は血流が非常に豊富な臓器であり、心拍出量の20%程度の血液が注ぎ込みます。そのため、腎臓に不用意にハサミを入れると、大出血をきたします。多くの場合は、腎動脈を一時的にクリップで遮断して、その間に腫瘍を切除して、さらに必要に応じて切除してできたスペースを糸と針で縫い縮めます。血流を遮断している時間が長ければ長いほど、正常な腎組織が傷んでしまいますので、迅速で正確な手術手技が求められます。

腎部分切除術については、現在ロボット支援下手術が普及してきています。広い意味では鏡視下手術のひとつですが、手術用ロボットを使用することでより細かく迅速に手術を行うことができます。身体への負担が少ないという鏡視下手術のメリットと、開腹手術のような手の動かしやすさを兼ね備えた手術方法です。

腎臓がん(腎細胞がん)の手術後の後遺症・リスク

1)根治的腎摘出術のリスク
・出血

腎臓は血液から老廃物を濾し出すための機能を担っているため、血流が豊富な臓器です。さらに、腎臓へ血液を送る血管(腎動脈)はかなり太く、損傷すると大出血になる可能性もあります。

・腸閉塞
術後に腸が癒着してしまうことで、腸の通りが悪くなり、それに伴って嘔吐や頭痛が起きます。しばらく鼻から胃腸まで管を通して安静をはかるなどといった処置が必要になります。

・腎機能の低下
腎臓は通常2つありますので、反対側が正常であれば特に日常生活に支障は起こりませんが、もともと反対側の腎機能が悪い場合などには、腎機能が低下し、日常生活に支障が出ることがあります。

・他臓器損傷
手術の際に他臓器を損傷してしまう場合があります。アプローチ法にもよりますが、腸、脾臓、胃、膵臓、十二指腸、大血管、横隔膜などを損傷する恐れがあります。

感染症
手術の傷に感染したり、内部で感染したりする場合があります。

その他、創ヘルニア、気胸、肺梗塞、心筋梗塞、脳梗塞などが主な合併症として挙げられます。また、鏡視下手術のリスクとして、手術中におなかを膨らませる炭酸ガスが血中に入り、つまってしまったり、皮下にガスがたまったり肩の痛みを生じることがあります。

2)腎部分切除術のリスク
・出血

全摘出の時と同様に、血管の損傷による大量出血が起こり得ます。また、部分切除術の際に腎臓に切り込みますので、それによる出血はある程度避けられません。医療機関によって、血流をおさえるために冷やしたり、反対に、正常腎機能をできるだけ保全するために腎動脈を遮断せずに腫瘍を切除したりするなど、細かい術式は定まっていません。

・腸閉塞
全摘の時と同様に、起こり得ます。

・腎機能の低下

手術中、腎動脈の血流を遮断する影響や切除する量などによって、手術側の腎臓の機能が予想より下がることがあります。反対側の腎機能が正常であれば術後に透析を要することは少ないですが、糖尿病や高血圧の方、もともとの腎機能障害がある方などは術後の腎機能次第で日常生活に制限がかかる可能性があります。

・他臓器損傷
部分切除であっても、手術の際に他臓器を損傷してしまう場合があります。アプローチ法にもよりますが、腸、脾臓、胃、膵臓、十二指腸、大血管、横隔膜などを損傷する恐れがあります。

特にロボット支援下手術を行っている場合、執刀医が患者から離れた場所にいることになるため、鉗子の肘などによって、カメラの視野の外でいつのまにか重要な臓器を傷つけているといったことが起こり得ます。

・感染症

手術の傷に感染したり、内部で感染したりする場合があります。

・尿漏
腎臓を部分切除する際に尿路に切り込まねばならなかった場合に起こりえます。切除が尿路にまで及んだ場合も、当然、術中に縫合して閉鎖しますが、それでも術後に腎臓の周辺に尿が漏れてしまう場合があり、これを尿漏といいます。漏れる量が多ければしばらく尿管内にカテーテルを留置し、そちらに尿が流れないようにすることで自然と塞がるのを待つことになります。どうしても塞がらない場合は手術を要することもあります。

その他、創ヘルニア、気胸、肺梗塞、心筋梗塞、脳梗塞などが主な合併症として挙げられます。また、鏡視下手術のリスクとして、手術中におなかを膨らませる炭酸ガスが血中に入り、つまってしまったり、皮下にガスがたまったり肩の痛みを生じることがあります。

参考:
http://www.asahikawa-med.ac.jp/dept/mc/urol/18.pdf
http://www.asahikawa-med.ac.jp/dept/mc/urol/07.pdf
病気がみえる Vol.8 腎・泌尿器 第2版

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