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腎細胞がんの転移・再発

[公開日] 2018.08.13[最終更新日] 2018.08.13

腎細胞がんの転移

腎細胞がんは、血行性に転移するがんです。血行性とはその名の通り、血管の中にがん細胞が入り込んで、血流にのって全身へと流れていき、どこか付着した場所で生育するという転移形式です。(一般的に、血行性以外の転移形式には、腹膜播種やリンパ行性転移などがあります。)

腎細胞がんの転移場所

腎臓の血管のうち、腎静脈は腎からの静脈血を下大静脈へと流入させる静脈です。下大静脈は右心房、右心室、肺と流れていきます。腎静脈にがん細胞が入り込むとがん細胞は肺へと容易に到達することができます。そのため、腎細胞がんは肺に転移しやすくなっています。 肺の次に転移しやすいのは骨です。さらに、リンパ節にも腎細胞がんが転移することがあります。その他にも、肝臓、副腎、膵臓、脳などに転移が見られる場合もあります。 転移に伴う症状 骨転移:病的骨折、骨痛 肺転移:咳、血痰、胸水貯留による呼吸困難 脳転移:痙攣、麻痺、中枢神経症状、頭痛など これらのように転移する部位によってあらゆる症状が出てきます。特に腎細胞がんはサイトカインという細胞同士がやりとりするための伝達物質を多く産生することが特徴です。サイトカインはたとえば炎症が起こると多く産生されますので、腎細胞がんが進むことで風邪をひいたようなだるさが続くことがあります。 また、骨に転移したり、炎症によって消耗したりすることで貧血が進み、輸血を余儀なくされる場合もあります。 腎細胞がんは肺に転移しやすいため、肺転移による呼吸症状が出ることがあります。 さらに、脳にもしばしば転移し、さらにそれが大きくなると圧迫などによって麻痺や痙攣などの神経症状が出ることもあります。 その他、皮膚転移や、副腎転移など、転移した部位に応じた症状が出ます。

転移巣に対する治療

一般的にがんの遠隔転移巣を手術によって切除することは少ないですが、腎細胞がんの転移巣に対しては切除することによって有意に生存率が延びるという研究成果が報告されています。 もちろん、肺に無数にある転移を全て取り切ることはできませんが、数個にとどまる場合、または薬によって縮小した場合であり、かつ体力的に問題無いようであれば積極的に手術が行われる傾向にあります。 全身状態、転移巣の部位などから切除が困難な症例においては、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬、インターフェロンを用いた免疫療法などが行われます。 分子標的薬とは、がん細胞だけが持っていて体の正常な細胞は持っていない細胞表面マーカーという目印を頼りにしてがん細胞を攻撃し、腫瘍を小さくする薬です。また、免疫チェックポイント阻害薬とは、患者さんの体内の免疫機能を増強することで腫瘍細胞を攻撃してもらい、腫瘍を小さくする治療です。これらの薬が出てくる前は、インターフェロンが主に用いられていましたが、最近ではあまり使用されるケースは多くありません。 基本的に、日本であれば日本泌尿器科学会から出されている腎癌診療ガイドラインを元に治療が決定されます。しかし、薬物療法については、新薬も次々に出てきており、専門家も、誰に、どの薬を、どのように使うのがよいのかについて詳しくは分かっていないのが現状です。そのため、医師の考えによって使用される薬剤が異なる場合がありますので、よく主治医の先生に、薬の特徴や期待される効果など聞いた上で、治療に取り組むことが大切でしょう。

腎細胞癌の再発

再発とは一度手術によってがんを取り除いたのち、再びどこかにがんが発生してしまうことを指します。腎細胞癌では多くの場合手術によって腎臓を摘出していますが、局所に再発することもあります。術後に一度がんが無くなったように思えても、後日離れたところに遠隔転移として再発する場合もあります。 もともと転移がなかった腎細胞がんに対して根治的腎摘出術を行った場合でも、約3割に再発が認められることがわかっています。また、再発する場合は術後2年以内である場合が多いとされています。最も多い再発場所は肺で、約半数を占めます。肺の他にはリンパ節、骨、肝臓などに再発がよくみられます。部分切除を行った場合、残された腎臓にも再発巣が見つかることもあります。そうなった場合は残った腎臓も摘出することになることが一般的です。 インターフェロンαやインターロイキン2といった古典的な免疫療法や、効果の乏しい抗がん剤しか治療として用いることができなかった時代だと、再発例に対する有効な治療がなく、転移性腎細胞がんの3年生存率は10%以下でした。しかし、最近の医療の発展によって分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬が開発されたおかげで、予後が次第に改善されつつあります。 再発した場合でも、早期発見、早期治療を行うことで命をのばすことができる場合があります。腎細胞癌になった際に、手術によって摘出したからといって油断せず、必ず医師の指示の通りに定期的に病院を受診し、適切なフォローアップを受けることが生存率の延長につながります。。 参考: 病気がみえる Vol.8 腎・泌尿器 第2版 http://www.ususus.sakura.ne.jp/062-001portal_h0.html https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka/115/10/115_917/_pdf
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