手術(外科治療)

前立腺を周囲の臓器ごと、すべて摘出するのが基本です。開腹手術のほかに腹腔鏡下手術があり、手術ロボットを利用するロボット支援腹腔鏡下手術も保険適用になりました。

併症のない限局性がんに最適

手術は前立腺がんの治療法としてよく行われていますが、ほかの多くのがんと違って部分切除という選択肢はなく、基本的にすべて前立腺全摘除術になります。最も大きな理由は前立腺がんは臓器内に多発する性質があり、全摘しなければ微小ながん細胞を取り残す可能性が高いからです。ほかに、小さな臓器で部分切除は困難であることや、全摘が生命に関わらないことも、理由として挙げられるでしょう。

前立腺を精嚢や精管などの周囲ごとそっくり摘出するほか、一般にリンパ節郭清も行います。前立腺摘出後に、排尿路を確保するために膀胱と尿道をつなぎ直します。

根治を目的とするため、がんが前立腺のなかにとどまっている限局性前立腺がんで、PSA監視療法の適応範囲を超えた、T1c~T2b(TNM分類)の前立腺がんが主な対象となります。被膜を超えて周囲に浸潤している場合も、リンパ節転移や遠隔転移がなければ手術を行うこともあります。その場合は病期や患者さんの意思により、放射線療法や薬物療法が併用されます。

全摘除術の術式は合併症が少ない方法へ

現在、広く行われている手術は、恥骨後式前立腺全摘除術、会陰式前立腺全摘除術、腹腔鏡下全摘除術の3種類です。恥骨後式と会陰式は、どちらも広義の開腹手術です。

前者はおへその下の皮膚を切開してお腹側から前立腺に到達し、これらの方法は、それぞれ一長一短があり後者は肛門周囲を逆U字型に切開して会陰側から前立腺に到達します。腹腔鏡下手術は近年急速に普及してきた方法で、腹部に5~6か所の穴(ポート)を開け、内視鏡や鉗子を挿入して手術を行います。

たとえば、恥骨後式は視野が広くてリンパ節郭清も容易ですが、前立腺が深い位置にあるため切開創が大きくなり、患者は出血や術後の痛みに悩まされることがあります。会陰式は切開の傷が小さく、骨盤底筋を切開しないことで排尿に関わる副作用も恥骨後式より少ない一方で、手術する医師の視野が狭く、リンパ節郭清の難易度も恥骨後式より高いとされます。

腹腔鏡下手術は画像を通して広い視野が得られ、傷が小さく出血も少ない低侵襲治療法として急速に広まりました。それでも、鉗子の動きが制約されるなどの難しさがあります。

手術支援ロボットの登場

最近、世界的に普及しているのが手術支援ロボット(da Vinci®:ダヴィンチ)を用いる腹腔鏡下手術です。2012年末時点で、米国の前立腺がん手術の98%は手術支援ロボットを使用しており、日本でも2012年に前立腺全摘除術に保険が適用されました。

腹部に開けた5~6か所の穴からカメラのほかに鉗子を取り付けたロボット・アームを挿入し、操作ボックスに入った医師がロボット・アームを操作します。内視鏡画面は三次元で、従来の腹腔鏡画面(二次元)よりもリアルに精密に患部を観察できます。また、医師が直接長い鉗子を操作するよりも、手術器具の動きがスムーズです。その結果、より安全で精度の高い手術が可能になりました。

前立腺全摘除術は尿失禁、勃起不全などの合併症を伴う可能性がありますが、手術支援ロボットの利用でその低減が期待されています(精液をつくる臓器を摘出し、精管も切断するので射精は不可能ですが、勃起神経の温存により、射精感は残ることがあります)。   

本コンテンツは認定NPO法人キャンサーネットジャパンが出版する「もっと知ってほしい前立腺がんのこと」より抜粋・転記しております。


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