標準治療について

症候性骨髄腫の治療には、自家末梢血造血幹細胞移植に大量薬物療法を併用する方法、あるいは標準量の薬物療法があります。症状を改善する治療も重要で、合併症の改善が骨髄腫の治療より優先されることもあります。

一般的に、多発性骨髄腫は、骨病変、貧血、腎障害などの症状が出た段階で治療を開始します。これまでの研究で、治療を始めるのが、診断時からでも症状が出てからでも結果は変わらないことがわかっているからです。ただ、進行の早いタイプ(高リスク群)と確認されたときには、早めに治療を始める場合があります。ただし、現時点では臨床試験として行われている治療です。

症候性骨髄腫の治療は、患者さんの年齢、体力、持病の有無、臓器障害による症状によって異なります。65歳以下で感染症や肝障害、腎障害がなく、心臓や肺の機能にも問題がなく、本人が希望した場合には、自家末梢血造血幹細胞移植と大量薬物療法を組み合わせた治療を行います。移植の対象にならない場合には、標準量の抗がん剤や新しいタイプの薬を組み合わせた薬物療法を行います。

多発性骨髄腫の治療では、骨病変、貧血、腎障害、高カルシウム血症など、骨髄腫に起因する症状の改善も重要です。肺炎、脊髄麻痺など緊急性の高い合併症の治療は、骨髄腫自体の治療よりも優先されます。

化学(薬物)療法について

移植の可否や骨髄腫による症状の軽重にかかわらず、長期間にわたり病状をコントロールするためには、最初にできるだけ標準治療を行うことが大切です。治療法は利点と欠点を確認したうえで、担当医と相談して選びましょう。

移植を受ける人の治療法

2つか3つの抗がん剤を組み合わせた導入 療法の後、患者さん自身の末梢血造血幹細胞を採取し、大量薬物療法と自家末梢血造血幹細胞移植を組み合わせた治療を行います。標準治療として推奨される導入療法 には、①ボルテゾミブ+ デキサメタゾン (BD)、②BD+シクロホスファミド(BCD )、③BD+ドキソルビシン(PAD)などの併用療法があります。ボルテゾミブは、骨髄腫細胞の活動を助けているプロテアソームという酵素の働きを抑える新しいタイプの薬です。

移植を受ける人は、導入療法を3~4コース行った後、白血球を増やす薬のG-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)を注射して末梢血より造血幹細胞を採取し凍結保存します。シクロホスファミドを併用する場合もあります。その後、点滴薬のメルファランを2日間大量投与し、投与2日目の翌々日に自家末梢血造血幹細胞移植を行って造血機能を回復させます。腎障害が高度な場合などには、メルファランを3割減らして投与します。

移植を受けない人の治療法

標準治療は、メルファラン+ブレドニゾロン+ボルテゾミブの3剤併用(MPB)療法や、メルファラン+ブレドニゾロン+サリドマイド※の3剤併用(MPT)療法です。ボルテゾミブは皮下注射、あるいは静脈内投与します。内服薬であるメルファラン、プレドニゾロン、サリドマイドは指示された日数服用します。MPB療法、MPT療法は、一般的に9コース行います。

その後、休薬、あるいはボルテゾミブや免疫調節薬のレナリドミド、サリドマイドなど、新しいタイプの薬(新規薬剤)による治療を続ける場合もあります。

体力のない高齢者や心臓や腎臓に持病のある人などは薬の量を減らし、重い副作用を起こさないように気をつけながら病状をコントロールすることが重要です。①リスク因子に1つでも当てはまる人、②リスク因子が1つ以上あり、重度の骨髄抑制(貧血、白血球・好中球・血小板の減少)が起こったことがある人には、ヨーロッパの専門家グループがこれまでの知見からつくった基準をもとに、薬の量を段階的に減らしていきます。

また、骨髄腫による症状の出方や患者さんの 持病、体力、希望に応じて、薬の組み合わせを変える場合もあります。

※2015年11月現在、多発性骨髄腫の最初の治療に使う場合は保険適用の対象外です。
●入院が必要な治療とは 多発性骨髄腫の薬物療法は、内服薬も多く、外来での治療が増えています。しかし、自家末梢血造血幹細胞の採取と移植、多剤併用薬物療法1コース目は、強い副作用が出ることがあるため、入院治療が一般的です。

本コンテンツは認定NPO法人キャンサーネットジャパンが出版する「もっと知ってほしい 多発性骨髄腫のこと」より抜粋・転記しております。