切除不能・再発の治療は薬物療法が中心

切除不能がんや再発がんの治療は、薬物療法が中心になります。標準治療が確立されていて、HER2陰性・陽性別に1次から3次治療まで進めていきます。薬物療法と並行あるいは単独で症状を軽減する緩和ケアを行います。

切除不能・再発がんでは薬物療法が中心に手術前の検査あるいは手術後の病理検査で、胃から離れたリンパ節、肝臓、腹膜、そのほか腹腔外の臓器にも転移が認められるといったⅣ期の進行胃がんや、手術したものの胃がんが再発した場合は、薬物療法が中心になります。このようなケースでは、がんが1か所だけでなく、あちこちの部位に、あるいは同じ臓器に複数現れることが多く、手術ですべてを取り切ることが難しい(切除不能)からです。

切除不能・再発胃がんに対する薬物療法に関して、これまでに行われた臨床試験から、がん細胞の表面にHER2という分子の受容体がある(HER2陽性)胃がんでは、トラスツズマブという分子標的薬(がん細胞表面にある分子だけを標的にして作用する薬剤)を用いることで治療効果が増強されることがわかってきました。現在は、切除不能・再発胃がんに薬物治療を初めて行う(1次治療)前にHER2検査を行うことが強く推奨されています。

このHER2検査の判定に基づいて、1次治療では、HER2陰性とHER2陽性のそれぞれの胃がんに対する標準治療が実施されます。すなわち、HER2陰性胃がんには「S-1*またはカペシタビン+ シスプラチン」が、HER2陽性胃がんにはトラスツブマブが加わった「S-1またはカペシタビン+シスプラチン+トラスツブマブ」が標準治療とされています。

なお、2015年に切除不能・再発胃がんに対してシスプラチンと同等の効果を持つ白金製剤で、外来治療が行えるオキサリプラチンが承認されました。そこで、HER2陰性胃がんには「S-1またはカペシタビン+オキサリプラチン」が、HER2陽性胃がんには「S-1またはカペシタビン+オキサリプラチン+トラスツブマブ」が新たに標準治療に加わりました。

抗がん剤をうまく使い3次治療まで目指す

治療中は、自覚症状、触診、X線、内視鏡、CT、腫瘍マーカーなどの検査を定期的に行い、治療効果を判断します。効果がある場合は原則として同じ治療を続けます。効果がない場合でも全身状態が良好であれば、治療法を変更して、2次治療、さらには3次治療と、薬物療法を続けることが推奨されています。

2次治療としては、臨床試験により延命効果が証明されたドセタキセル、パクリタキセル(週1回法)、イリノテカンのいずれかによる単独療法に加えて、2015年から新たに延命効果が証明されたパクリタキセル+ラムシルマブ併用療法、およびラムシルマブ単独療法が推奨されるようになりました。

3次治療には、2次治療で使用していない抗がん剤を用いることを考慮します。そして、切除不能・再発がんの薬物療法で重要なのは、3次治療まで行うことで、有効な薬剤をすべて使って治療します。ただし、イリノテカンは腸閉塞などがあると副作用が強く出やすくなります。腹膜転移が広範に認められる、いずれ高度になる可能性がある場合は、腸閉塞などを起こしやすいため、注意が必要です。

臨床試験への参加や緩和ケアも選択肢に

肝臓や腎臓の機能低下、白血球減少、発熱があり感染症にかかっているなど、全身状態が悪くて抗がん剤を使えない場合があります。また、標準治療がすべての患者さんにとって、必ずしも最適な治療とは限りません。がんの進行の程度や転移している場所の違い、患者さんの状態(年齢、食事や排便の状況、臓器機能の状態など)や希望、これまでの臨床試験の成績などを踏まえて、担当医と相談しながら治療を進めていくことが大切です。その中で、開発中の新規抗がん剤の効果や副作用をみるための治験(臨床試験)に参加できることもあります。

また、抗がん剤治療を受けないことも選択肢の1つです。この場合は、がんによる痛みをはじめ、さまざまな症状を少しでも軽減させることに重点をおいた緩和ケアが治療の中心になります。胃がんでは、症状緩和を目的とした手術(緩和手術、姑息手術)が行われることもあります。

たとえば、胃の出口にがんがあって食事がとれない場合は、胃と空腸をつなぐバイパス手術を行ったり、内視鏡で胃の出口の狭くなっている部分を確認し、そこにステント(金属の筒)を入れたりして食事をとれるようにします。胃から離れた臓器に転移していてすべて切除しきれない状態でも、がんから輸血が必要な程度の出血が何度もある場合は、貧血の改善を図る目的で出血している部分を切除する手術を行うこともあります。

担当医や家族とも相談し納得いく生き方を

切除不能・再発胃がんは治癒が難しいケースがほとんどですが、有効な治療法の研究は続いています。最近では薬物療法の進歩により切除不能・再発胃がんの患者さんでも2年以上生きられる人が大きく増加しています。どのような治療やケアを受け、どこでどのように過ごしていきたいのか、担当医や家族ともよく相談し、納得できる方法を選ぶことが大切です。

本コンテンツは認定NPO法人キャンサーネットジャパンが出版する「もっと知ってほしい胃がんのこと」より抜粋・転記しております。