化学(薬物)療法について

手術後の薬物療法は、手術で完全にがんを切除したあとにⅡ期、Ⅲ期を対象に再発を予防する目的で行われる場合と、手術でがんを取り切れなかったときに行われる場合があります。ここでは再発予防を目的に行われる術後補助化学療法について解説します。

術後の再発予防を目的に治療

手術で肉眼的にがんを完全に切除すること(根治切除)ができても、画像検査や肉眼ではわからないような微少ながんが転移している可能性があります。それらを死滅させることが再発防止につながるため、手術後に薬物療法(術後補助化学療法)を行います。

術後補助化学療法としては、これまでの臨床試験の結果に基づき、内服薬であるテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(S-1*)の単独療法に加えて、2015年11月からカペシタビン+オキサリプラチン(CapeOX)併用療法が実施可能になりました。しかし、術後補助化学療法は、胃がんの手術を受けたすべての患者さんに行われるわけではありません。

基本的に、①胃がんの根治手術を受けた後の病理検査で、ステージⅡ、Ⅲと確認されていること(ただし、この中には術後補助化学療法が必要ではないケースがあり、S-1単独療法とCapeOX併用療法の選択を含め担当医に確認してください)、②ある程度元気で食事がとれていて身の回りのことがほぼ自分で行え、日中の半分以上は床に伏さずに起きて生活している、③主要な臓器(骨髄、肝臓、腎臓など)の機能が保たれている、④十分な説明のあとに患者さん本人が治療を受けることを同意をしている、⑤重症の合併症がない、⑥抗がん剤と一緒に服用できない薬剤(抗てんかん薬など)を使用していないといった条件を満たしている人が対象となります。
*TS-1とも呼ばれる

S-1は1年間、CapeOXは6か月間続ける

S-1単独療法の治療スケジュールは、術後の回復に応じて2~6週間の間にS-1を飲み始めます。4週間毎日服用し、2週間休薬することを1コース(6週間)として8コース(約1年)繰り返します。一方、CapeOX併用療法も術後の回復に応じて開始します。内服薬のカペシタビンを2週間毎日服用し、1週間休薬しながら、オキサリプラチンを1日目に点滴投与することを1コース(3週間)として8コース(約6か月)繰り返します。

術後補助化学療法の治療中は、主治医の指示に従い患者さんの状態に応じて2~4週間に1回、診察および自覚できない副作用を調べるために血液検査を受け、胃切除術による後遺症とともに抗がん剤の副作用をチェックします。

また、6~12か月ごとにCT検査を行い、再発の有無を確認します。なお、抗がん剤には副作用が強く現れるために併用が禁じられている薬剤(S-1と真菌治療薬、S-1とカペシタビンなど)や、併用すると副作用が出やすくなるために十分注意して併用、あるいは減量する必要がある薬剤(静脈血栓症や心筋梗塞の治療薬など)があります。術後補助化学療法を始める前や治療を行っている最中は、漢方薬や市販薬、健康食品などを含めて、飲み合わせてもよいかどうかを担当医や薬剤師に相談してください。

副作用とうまく付き合うためのポイント

抗がん剤の副作用の現れ方には個人差がありますが、通常、治療を始めてから1~2か月以内に強く出る傾向がみられます。また、その時期は、手術後まもない時期と重なるので副作用だと思っていても、ダンピング症候群や胃切除術の後遺症のこともあります。不快な症状があるときは、遠慮せずに担当医や看護師、薬剤師に相談しましょう。副作用が強く出て、治療の継続が困難だと医師が考えた場合は、減量/休薬基準に則った対応がとられます。

しかし、できるだけ予定どおりの服用を続けることが重要なので、医師や看護師、薬剤師からあらかじめ副作用の症状やその発現時期、期間などを聞いておき、それらの症状が現れたら、我慢せずに早めに副作用を抑える薬を使います。また、副作用メモに症状の発現や程度を記録して自分の状態を把握するとともに、そのことを医師や看護師、薬剤師に伝えて自分の副作用が重いのか軽いのかを理解することに努め、副作用とうまく付き合いながら治療を続けてください。

副作用が重くて治療を継続できなかった場合、再発率は少し高くなる可能性は否定できませんが、そのことだけが原因で再発するわけではないので、必要以上に不安になることはありません。

本コンテンツは認定NPO法人キャンサーネットジャパンが出版する「もっと知ってほしい胃がんのこと」より抜粋・転記しております。