食道がんの治療

食道がんの治療は通常、日本食道学会が定めているStage別の治療方針等にもとづいて進められます。Stage診断にはがんの深達度、リンパ節転移の有無や部位、食道付近以外の遠隔転移の診断、さらには、患者さんの全身状態を考慮して総合的に治療方針が検討されます。

食道がんの標準的治療について

食道がんの治療は、外科手術、放射線療法、化学療法が基本です。どの治療法を選択するかは、がんのStageや患者さん側がリスクを考慮したうえで納得し、治療法を決定していくことが重要です。まずは、Stage別に治療方法についてご説明します。

Stage0の初期がん、早期がんでは、内視鏡治療が多く選択されます。この方法は、がん細胞の深達度が上皮内、固有層にとどまっている状態のがんがよい適応です。がん細胞が粘膜筋板に達するものや粘膜下層にわずかに浸潤した段階のがんに対して行うことはありますが、リンパ節転移の可能性を念頭において検討する必要があります。

内視鏡治療と外科手術は同等の治療効果が認められているため、侵襲性、術後の身体的負担を考慮すれば内視鏡の方が選択されることが多いのです。

Stage Ⅰ−Ⅲでは外科手術が標準治療です。外科手術では、身体にメスを入れてがんを直接取り除く方法で、食道がんの最も標準的な治療となっています。食道がんの手術では、がんを含めて食道を切除するとともに、同時にリンパ節を含む周辺の組織も一緒に切除します。

食道がんの根治手術は、術後何らかの合併症が約40%の症例で発生するほどであり、身体的負担の大きな手術のひとつです。

手術の合併症として挙げられるのは、出血、肺炎、無気肺、創感染、縫合不全、反回神経麻痺、乳び胸、肺塞栓症などさまざまです。これらの合併症2~3%によって周術期に死亡するとされています。これらの手術後1か月以内に死亡する割合は、手術前に別の臓器に障害を持っている場合には持っていなかった人と比較してその高くなるといわれています。

そして、一般的に手術後から新しくつなぎ合わされた胃や腸の状態が落ち着き、食物を取れるようになるまでには、約1週間から2週間の時間がかかります。また、手術後の食事内容に関しても、ゼリー状の流動食からはじめ、ゆっくり時間をかけて普通の食事に戻していく必要があります。また、手術後には、回復に必要な栄養素を摂取することが大切ですが、手術前とは消化管の状態が変わりますので、手術前よりも食事は、よく噛む、消化の良い食べ物を選ぶ、1回の食事量を減らし、1日の食事回数を増やすなどの工夫が大切になります。

合併症が無く、食事がしっかりとれるようになれば、概ね術後3-4週間ほどで退院となります。

近年は、化学放射線療法と抗がん剤の併用療法の場合や、化学放射線療法により、手術をせずに臓器を温存しつつ外科手術療法と同等の治癒率が得られるという報告もされています。

Stage II・IIIにおいて食道がん外科手術が可能である場合には、標準治療である外科手術、外科手術と化学放射線療法の併用が主に行われます。

Stage II・ IIIにおいて食道がんの治療において外科手術療法が不可能と判断された場合には、化学放射線療法が行われることになります。

化学療法

化学療法とは、がん細胞を縮小させる効果のある抗がん剤を体に投与し、治療を行う方法です。抗がん剤は血液の流れを利用して全身に行き渡らせることができるため、外科手術では切り取れないところや放射線をあてられないところにあるがん細胞を縮小させる効果を期待することができます。

食道がんにおいて化学療法のみが適応となる状態というのは、遠隔転移がある場合や、外科手術療法後に再発した場合です。また、痛みや他の苦痛に対する症状緩和を目的として化学療法が行われる場合もあります。

放射線療法

放射線療法とは、X線などの高エネルギーの放射線をあてて、がん細胞を縮小させることを目的とした治療法です。化学放射線療法は、外科手術療法と同様に局所的にがん細胞の治療が可能であるため、臓器の機能や形態を温存することを目的にした治療方法です。

食道がんの治療は、Stageによっても患者さんの全身状態によっても治療方針は変わってきますが、はじめのがん細胞の深達度、リンパ節転移の有無や場所、食道付近以外の遠隔転移の診断などのStageの診断が重要です。

そして、Stageが確定すれば、適応となる選択肢の中から、治療法を選択することになります。食道がんの標準治療には、外科手術、放射線療法、化学療法があります。それらを単独で行う場合や、併用して行う場合など様々です。食道がんの根治を目指すのか、生活の質を重視するのかなど、治療法の選択には、患者さんの現在の状態や今後の生活などの幅広い視野を持った選択が重要だと言えるでしょう。

日本食道学会 編:食道がん診断・治療ガイドライン 2012年4月版.金原出版,2012
新臨床内科学 第9版 20090101 発行


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