食道がんの手術療法

手術療法は、身体からがんを取り除く方法で、食道がんの最も標準的な治療です。食道がんの手術では、がん細胞を含め食道を切除します。そして、その時、同時にリンパ節を含む周辺の組織も一緒に切除します。

現在は、食道がんの外科治療においても従来の手術方式と比較して身体的負担の少ない治療が普及しつつあります。食道がんにおける身体的負担の少ない外科手術とは、手術前に補助的な化学療法を行い、まずがん細胞を縮小させて、内視鏡手術でがん細胞を切除するものです。

食道がんに対する身体的負担の少ない手術では、鏡視下に食道がんを切除し、胃や腸などを用いて再建を行います。鏡視下手術では、胸やお腹の皮膚に傷をつけるのが最小限で済み、痛みや苦痛が少なく、術後の回復が早いというメリットがあります。

次に食道がんの種類別に手術について詳細にご説明します。

頸部食道がん
頸部食道がんとは、がんが頸部の食道に存在し、その周辺へ広がりがない場合には、喉と胸の間の頸部食道を切除します。切除した食道の代わりに、10㎝程の小腸を移植し、再建します。移植した腸管は、血管と頸部の血管とつなぎ合わせる必要があります。

頸部の食道以外に喉まで広がったがん細胞に関しては、頸部食道と喉頭を切除し、小腸の一部を喉頭と胸部食道の間に移植します。そして、気管の入り口を頸部の最下端中央につくります。これは、喉頭を切除するために声が出せなくなります。

胸部食道がん
胸部食道がんとは、食道の入り口から3cm下から、約20cmのあたりにできるがんです。日本人の食道がんの90%近くは胸部食道にできます。胸部食道がんの手術では、胸部食道を全て切除します。そして同時に、胸部のリンパ節も切除します。右胸を開いて胸の中にある食道を切除します。近年では、胸腔鏡を使って開胸せずに食道を切除する方法もあります。

食道を切除した後は、胃を引き上げて残っている食道とつなぎ、食物の通る新しい道を再建します。その際に、胃が使用できない場合には、大腸または小腸を使います。胃や大腸、小腸を引き上げる経路は、1. 前胸部の皮膚の下を通す方法、2. 胸骨の下で心臓の前を通す方法、3. もとの食道のあった心臓の後ろを通す方法の3通りがあり、それぞれの病態により選択されます。

腹部食道がん
腹部食道は、胸骨上縁より気管分岐部下縁までの上部と気管分岐部下縁より食道胃接合部までを2 等分した上半分の中部と胸骨上縁より気管分岐部下縁までと気管分岐部下縁より食道胃接合部までを2 等分した上半分と、気管分岐部下縁より食道胃接合部までを2 等分した下半分の中の胸腔内食道に分けられます。

腹部食道のがんには、胸部食道がんと同様に、右胸を開胸して食道と周囲のリンパ節を切除する方法や、左胸食道の下部と食道からの胃の入り口部分を切除する方法など、さまざまな方法が行われます。

※バイパス手術
がんがある食道を温存して、別の食物が通る経路につくる手術です。胃を頸部まで引き上げて頸部食道とつなぐ方法です。食道と胃の間を、大腸などでつなぐこともあります。この手術は、がんの根治を目指したものという方法よりは、一時的にでも食物を食べられるようにとQOL(生活の質)の向上を目指した方法です。最近では、これに代わって食道内挿管法も用いられます。

外科手術の合併症
外科手術療法後の合併症には以下のような症状が挙げられます。

食道狭窄
食道を切除し、新たに再建した場合に、つなぎ合わせるつなぎ目がうまくくっつかずに内腔が狭くなってしまう症状です。この場合に、食物が通りにくくなり、食事をする際に支障が出てしまいます。そして、この食道狭窄に対する対処法としては、食道を拡張するための手術や、バルーンを入れて内腔を広げる方法などが用いられます。

嚥下障害
嚥下障害とは、食べものが飲み込めなくなる後遺症です。食道を切除し、再建した食道に何らかの問題がある場合、もしくは手術によって神経が傷ついたことで起こります。神経障害の場合、かすれたような声になる変声症が多く見られます。特に再度手術を必要とするような問題が起こっていない場合には、多くは時間をかけ、リハビリをすることによって回復します。

ダンピング症候群
ダンピング症候群とは、食道がんの手術で胃が小さくなった際に、食べ物があふれ返って一気に小腸のほうへ流れ込み、食後に吐き気や動悸などさまざまな症状が現れることをいいます。この症状は、食道がんだけでなく、胃がんの手術の後にもよく見られる後遺症であるといわれています。このダンピング症候群の対処法としは、食事の回数を増やし、1回の食事量を減らす、そして、よく噛んで食べることが基本です。

逆流性食道炎
逆流性食道炎とは、胃酸の逆流によって生じる症状です。胃の入り口には、胃液や食べ物の逆流を防ぐ「噴門」がありますが、手術によってこれを切除してしまうと逆流が防げないために、胸やけが起こりやすくなります。また逆流した食べ物が気管のほうに入ると肺炎につながる恐れもあるため危険です。

逆流性食道炎の対処方法としては、食後にすぐに横にならないこと、寝るときに上半身をやや高くしておくなどして、胃酸の逆流を防ぐ工夫が必要となります。上記のほかにも、心臓などに循環機能に後遺症が出る場合などもあります。いずれのケースでも症状が強い場合は我慢せず、医師に相談して適切な処置をし、自分に合った対処方法を見つけていくことが大切です。

手術に続いて発生する合併症は、肺炎、縫合不全(ほうごうふぜん)、肝臓、腎臓、心臓障害などが考えられます。これらの合併症が死につながる割合は、は2~3%と言われています。これらの手術後1か月以内に死亡する割合は、手術前に別の臓器に障害を持っている場合には持っていなかった人と比較してその高くなります。

手術後につなぎ合わされた胃や腸の状態が落ち着き、食物を取れるようになるまでには、一般的には、1週間から2週間ほどの時間がかかります。

また、手術後の食事は、重湯、ゼリー状などの流動食からはじめ、ゆっくり時間をかけて普通の食事に戻していく必要があります。この時期には、必要な栄養素をしっかり摂取することが大切ですが、手術前とは、食物を消化させる過程が異なるので、手術前よりも食事は、よく噛む、消化の良い食べ物を選ぶ、1回の食事量を減らし、1日の食事回数を増やすなどの工夫が必要です。

術後は胸が詰まりやすくなるため、なるべく食べ物のサイズを小さくすると良いでしょう。それらができれば、早くて術後3週間ほどで退院となります。

日本食道学会 編:食道がん診断・治療ガイドライン 2012年4月版.金原出版,2012
新臨床内科学 第9版 20090101 発行


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