子宮体がんの治療


  • [公開日]2023.01.01
  • [最終更新日]2023.02.14

子宮体がんの治療の決め方

子宮体がんの治療においては、可能な限り手術を行います。また、進行の程度や再発リスクによって、骨盤・傍大動脈リンパ郭清が検討されることもあります。

手術後は、病期の確定と術後の再発リスク分類を行い、その後の治療法を選択していきます。

子宮体がんの手術療法

子宮体がんの手術は、子宮全摘出+両側付属器(卵巣・卵管)切除を行うことが基本です。
子宮全摘出の方法は下記の3つです。

単純子宮全摘出

最も摘出範囲の狭い術式で、子宮と子宮を支える靭帯や組織の一部を摘出します。また、子宮体がんは卵巣へ転移しやすいため、ほとんどの場合両側付属器(卵巣・卵管)も同時に取ります。

準広汎子宮全摘出

単純子宮全摘出よりも更に切除範囲を広げ、膣壁やその周囲の組織まで取り除きます。

広汎子宮全摘出

最も摘出範囲の広い術式で、がんが子宮頸部まで進行している場合に実施されます、骨盤近くから周囲の組織を広く切除することに加え、多くの場合骨盤内のリンパ節も摘出します。

ただし、年齢や悪性度、がんの広がりなどについて、一定の条件を満たしている場合には、卵巣や子宮を残す妊孕性温存治療も可能なケースもあります。

リスクも理解した上で納得した治療を選択できるように、主治医とよく話し合うことが大切です。

手術後の合併症には、子宮の周りの組織を含めて広範囲に切除したことによる排尿・排便のトラブルがあります。また、閉経前に両側の卵巣を切除した場合や、放射線治療で卵巣の機能が失われた場合、女性ホルモンの分泌が減少し、更年期障害のような症状が起きやすくなります。

リンパ節郭清を行った患者さんには、下肢のリンパ浮腫、リンパ管炎、リンパ嚢胞といった後遺症が出ることがあります。治療から数年たって出てくることもあるため注意が必要です。

手術方法は、基本的には開腹手術です。

早期のがんでは、腹腔鏡下手術やロボット支援下手術が可能な場合もあり、傷が小さく痛みも軽減され、入院期間も短いというメリットがあります。

一方で、実施には条件があり、開腹手術と比較すると転移を見逃す可能性などリスクも伴うことには注意が必要です。

子宮体がんの放射線療法

高エネルギーのX線やガンマ線でがん細胞を傷つけ、がんの増殖を抑える治療法です。

主に手術後の再発予防のために行いますが、手術が難しい場合の治療や、痛みなどの症状の緩和を目的として行うこともあります。

体の外から放射線を照射する外部照射と、腟の中から子宮の中に放射線を照射する腔内照射があります。

副作用には、直腸炎、膀胱炎、小腸の閉塞、下痢などが知られています。また、治療が終わって数カ月から数年たって発症する副作用(晩期合併症)もあります。

子宮体がんの薬物療法

子宮体がんの治療では、進行している場合でも手術が第一選択です。そのため、薬物療法は、主に手術により、中・高リスク群と診断された場合に、再発予防を目的として使われます。また、手術により切除しきれない場合や、再発した場合の治療としても使われます。

細胞障害性抗がん剤

子宮体がんで使われる代表的なものとして、がん細胞のDNA合成を阻害するプラチナ製剤や、がん細胞の細胞分裂を阻害するタキサン系製剤、抗がん性抗生剤などがあります。

実際の治療では、ドキソルビシンシスプラチンを併用するAP療法やパクリタキセルカルボプラチンを併用するTC療法などがよく使われます。

内分泌療法薬

エストロゲン依存性の子宮体がんに対しては、エストロゲンの作用を抑える黄体ホルモンを大量に投与する内分泌療法が選択されることもあります。

がん化の一歩手前の段階(子宮内膜異型増殖症)の場合やごく早期の子宮体がんの場合の選択肢であり、妊孕性を温存できる治療法です。

ただし、副作用の一つに血栓症があげられるため、過去に血栓症の既往歴がある方や、その他のホルモン療法を使用中の方などは、この治療を受けられない可能性もあります。

分子標的薬・免疫チェックポイント阻害剤

殺細胞性抗がん剤による治療後に増悪が見られ、切除が困難な進行・再発の子宮体がんにおいては、分子標的薬であるレンバチニブ(製品名:レンビマ)と、免疫チェックポイント阻害剤であるペムブロリズマブ(製品名:キイトルーダ)が治療の選択肢になります。

また、頻度は高くありませんが、遺伝子検査でマイクロサテライト不安定性が高い場合(MSI-H)であれば、免疫チェックポイント阻害薬であるペムブロリズマブが提案されます。

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