手術(外科治療)

大腸がんの手術の基本は、がんがある部分を含む腸管の切除とリンパ節郭清です。最近では、腹腔鏡手術も増えています。結腸がんの手術では術後の生活にほとんど影響はありませんが、直腸がんの手術では、排便習慣の変化や排尿機能・性機能の障害などの後遺症が起こる場合があります。大腸がんの手術の基本は、

①がんのある部分から十分な“安全域”をとって大腸を切除し、
②転移している可能性がある範囲のリンパ節を切除(リンパ節郭清)し、
③残った腸管同士をつなぐ(吻合)の3つです。

手術は全身麻酔で行われ、手術時間は通常3~4時間程度です。術後の経過が順調であれば、入院期間は約2週間です。

結腸がんの手術

結腸がんの手術では、がんから口側・肛門側にそれぞれ約10cm離して大腸を切除します。さらに、がんが転移している可能性のある範囲のリンパ節を郭清し、その後、残った大腸同士をつなぎ合わせます。約20cmの大腸を切除しても、栄養の消化・吸収には影響はなく、ひどい下痢になることも通常ありません。

標準的なリンパ節郭清を行った場合でも、身体への影響はほとんどありません。退院後も運動や食事の制限はなく、日常生活に影響を受けることはほとんどありません。

直腸がんの手術

直腸がんの手術は、肛門を残す「括約筋温存手術(前方切除術)」と、肛門を残さない「直腸切断術(マイルズ手術)」の2つに大きく分けられます。直腸切断術では、肛門の代わりとなる便の出口として人工肛門(ストーマ)を作ります。肛門の入口からがんまで約6cm離れていれば、原則として肛門を残すことができます。最近では手術技術が進歩し、より肛門に近いがんでも肛門を残せるようになりました。

ただし、肛門が残っても、直腸の大部分が切除されると十分に便を溜められないために、便の回数が増えたり、排便を我慢できなくなったりします。また、骨盤内の直腸の周りにある泌尿器・生殖器の機能をつかさどる自律神経が手術でダメージを受けると、排尿や性機能が障害されることもあります。

腹腔鏡手術とは

腹腔鏡手術とは、お腹に1cm程度の穴を4~5個開けて、そこから専用の筒状のカメラ(腹腔鏡)と専用の手術用具をお腹の中に入れて行う手術方法です。お腹の中で行われることは、通常の開腹手術と同じです。

通常の開腹手術に比べて傷が小さくて済むため、手術後の痛みが少なく、身体の回復が早く、入院期間も短くて済むといった利点があります。一方で、高い技術を必要とし、開腹手術よりも手術時間が長い傾向があります。

手術(外科治療)の後遺症

手術の合併症

大腸がんの手術では、以下のような合併症が起こることがあります。 

・縫合不全:縫い合わせた腸がうまくつながらず、そのため、縫い目のほころびから便がお腹の中に漏れ出ること。結腸がんの手術では約1.5%、直腸がんの手術では約5%に起こるとされています。
・腸閉塞(イレウス):手術の影響で腸がうまく働かず、便の通りが悪くなった状態のこと。
・創感染:手術したお腹の表面の傷が化膿する(うんでしまう)こと。大腸の中は細菌が多いため、大腸がんの手術では約10%に起こります。

手術後の生活について

大腸がんの手術後は、運動や食事に特別な制限はありません。適度に身体を動かし、「ゆっくり、よく噛んで、腹八分目」を心がけましょう。直腸がんの手術後に起こる排便・排尿機能障害は手術後半年~1年かけて、ある程度まで徐々に改善してきます。薬や生活パターンの工夫でこれらの症状と上手に付き合っていきましょう。

内視鏡治療について

内視鏡治療では、お腹に傷をつけることなく、大腸内視鏡を用いてがんを切り取ることが可能です。ごく早期の大腸がんであれば、内視鏡治療で完治が可能です。

切り取ったがんの病理所見により、追加の手術がすすめられる場合もあります。 内視鏡治療には、なんといっても手術と違ってお腹に傷がつかないという利点があります。身体への負担が少なく、外来あるいは短期間の入院で行える治療法です。また、大腸の粘膜には痛みを感じる神経がないため、内視鏡治療では、がんの切除によって痛みを感じることはありません。

内視鏡治療の対象

内視鏡治療に適している大腸がんは、一般的に次のような条件に当てはまるものです。

◉がんが粘膜内にとどまっている、または粘膜下層の浅い部分までにとどまっていると予想されるもの
◉無理なく1回で切除できる大きさのもの

内視鏡治療の方法

肛門から大腸内視鏡を挿入し、内視鏡の先端の穴から専用の器具を出してがんを切り取ります。切除の方法には、茎のある形のがんを切除する「ポリペクトミー」、平たい形のがんを切除する「内視鏡的粘膜切除術(EMR)」、「内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)」の3つの方法があります。

ESDは、ナイフ状の内視鏡用電気メスでがんの周りの粘膜をぐるりと切ってがんの部分をはがし取っていく、新しい内視鏡治療の技術です。従来のEMRで切除できるものより大きながんでもきれいに一括切除できるという利点があります。2012年4月に保険収載となりましたが、高い技術を要するため一部の専門施設でのみ行われています。

内視鏡治療の合併症

まれに出血や腸管穿孔(腸に穴が開くこと)などが起こることがありますが、その頻度はいずれも約1%です。合併症が起こった場合は、入院が長くなることもあります。

内視鏡治療後に手術が必要になる場合

内視鏡治療の後は、切り取ったがん組織を顕微鏡でよく調べます(病理検査)。その結果、がんが粘膜内や粘膜下層のごく浅いところまでにとどまっていて、きれいに取り切れていれば、そのまま経過観察となります。

一方で、がんを切除した切り口(断端)にがんが露出している場合や、がんが粘膜下層の深部まで達している場合、血管やリンパ管にがん細胞が入り込んでいる場合などは、リンパ節転移の可能性が約10%程度あるため、追加手術(腸管切除+リンパ節郭清)がすすめられます。ただし、病理検査の結果によって、リンパ節転移の可能性の程度は異なります。

これに加え、患者さんご自身の考え、年齢、身体の状態(普段の活動や持病)などを総合的に評価し、手術を行うかどうかを決定することになります。担当医とよく相談してください。

本コンテンツは認定NPO法人キャンサーネットジャパンが出版する「もっと知ってほしい大腸がんのこと」より抜粋・転記しております。


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