CaNoWムービー
願いを叶えるまで
福島県在住の池田ひろみさんの長男の大空(そら)さん(17歳)は、1歳の時「退形成性上衣腫」と診断されました。脳腫瘍の一種で、希少ながんです。以来、手術のために17回も入退院を繰り返してきました。直近となる2022年春の入院生活は4カ月におよび、大空さんはもちろん、ご家族も大変な思いをしたそうです。現在、症状は落ち着いているものの、再発のリスクもあります。だからこそ今、「気持ちを前向きに切り替えたい」とCaNoWに応募されました。
歩行や食事にも介助が欠かせない
ひろみさんが大空さんの異変に気づいたきっかけは、下痢や嘔吐など風邪のような症状でした。風邪薬を飲ませても悪化。首すわりがガクガクになってしまったため、CT検査を受けたところ、脳に腫瘍が発見されたのです。
「上衣腫」は、15歳未満の小児に多くみられる脳腫瘍。腫瘍細胞の形態によって「上衣腫」と「退形成性上衣腫」に分類され、大空さんが罹患している退形成性上衣腫はより悪性度が高いとされています。
治療の基本は手術と放射線治療です。手術による全摘出が最も望ましく、安全にできるだけ多くの腫瘍を摘出するため、計画的に2回目以降の手術が行われることもあります。
症状は、腫瘍が発生する場所によって異なりますが、体を思うように動かせない、しびれ、頭痛、嘔吐、意識障害、ふらつき、歩行困難などがよく見られます。大空さんも歩いている時にふらついて転びやすく、コミュニケーションは繰り返し伝える必要があります。食事にはとろみをつけるなど、日常的に介助が欠かせません。
1~2カ月の予定が4カ月に延びて…
大空さんが17回目となる手術を受けたのは2022年春のことでした。
「1~2カ月で退院できる予定でしたが、様々な事情でどんどん延び、約4カ月間の入院となってしまいました」とひとみさん。想定外に長引いた入院生活がどれほど本人やご家族の心身を消耗させたか、想像に難くありません。
そんな折、ひろみさんはQLifeが運営する「がんプラス」のサイトを見て、CaNoWの企画参加者を募集していることを知ります。そこからCaNoWのサイトにアクセスし、遺伝性疾患のある男の子が象とふれあう企画に興味を持ったそうです。
以前から動物と触れ合いたいと望んでいたという大空さん。「動物のぬくもりを感じることで、大空本人だけでなく家族も気持ちをリセットし、これからもがんばっていきたい」とひろみさんは考えました。CaNoWに応募して当選した時のことを、「長い闘病生活が報われる気持ちだった」と、喜びを明かしてくれました。
CaNoWでは当初、動物と触れ合うプランを考えたものの、ご家族全員が新型コロナウイルス感染症に罹患したことや、インフルエンザの流行に見舞われたことなどから、大空さんの健康を考慮して企画を変更。東京・池袋の「サンシャイン水族館」を貸し切りにするプランに決定しました。
薄暗い場所は車いすを使用し、いざ夜の水族館へ
企画当日、福島県から車で上京したひろみさん、大空さん、弟のりくとさん(10歳)。サンシャイン水族館の空間を、ご家族だけで心ゆくまで楽しんでいただきます。
最初に足を運んだのは屋外にある「天空のペンギン」水槽でした。通常の貸し切りプランは館内エリアのみですが、この日は特別に観賞させてもらえました。屋外エリアは薄暗いため、車いすを使用して安全を確保しました。
頭上にまで張り出した水槽を泳ぎ回るペンギンたち。大空さんはペンギンを指差したり手を振ったりして、夢中で見入っていました。
個性的な生き物達との出会いに大喜び!
さらに、個性的な海の生き物が集まる館内へと移動します。グネグネと動くタコや、水槽内をいっせいに回るイワシの群れなど、たくさん並ぶ水槽の一つひとつを、大空さんはじっくりと観察します。
「さかな、さかな」
「動いてる」
歓声を上げ、身を乗り出しながら、海や川の生き物との出会いを全身で楽しんでいることが伝わってきます。嬉しくて思いきり声を出しても大丈夫。この日は貸し切りのため、だれにも気兼ねはいりません。
水槽の前からなかなか動こうとしないため、ひろみさんが「次、行くよ」と声をかける一幕もあるほど、大空さんは観賞に没頭していました。
小さな水槽を覗き込んでいたひろみさんが突然「うわぁ!」と、声を上げる瞬間も。珍しいカエルを見つけたのです。また、水槽を漂うエイの腹側を見て、「笑っている。やさしい顔してる」と感想を口にするなど、ひろみさんもユーモラスな生き物たちを楽しんでいるようでした。
無数のクラゲが遊泳するエリアも、普段は混み合っていますが、この時ばかりは池田さんご家族だけの空間です。生き物を見つけたらシールを貼ってゆくシールラリーにも、皆でチャレンジしました。
そして、CaNoWスタッフからのサプライズ! 大空さんとりくとさんに、それぞれカワウソとペンギンのぬいぐるみ、そして大空さんが好きだというチンアナゴのお箸セットをプレゼントしました。
普段は、ひろみさん一人では手が回らないことを、りくとさんが手助けしてくれるなど、家族で力を合わせて闘病を乗り越えてきた池田さんご家族。帰宅後のアンケートでは、「今の生活は苦しいけれど、楽しい思い出を家族で共にでき、皆で支えていける気持ちの余裕が生まれた気がします」とのメッセージを寄せてくれました。
CaNoWでは後日、水族館で撮影したご家族の記念写真を、アルバムにして贈呈しました。これからも大変な時、アルバムを開けば、あの時の記憶がよみがえってくることでしょう。
参照:
日本小児神経外科学会
小児慢性特定疾病情報センター
日本脳腫瘍学会 脳腫瘍診療ガイドライン
実現した日: ..
ページ公開日: 2022.12.04