こんにちは。がん情報サイト「オンコロ」の吉田です。
2023年6月16日、「がんと共に生きる想い」をアートとエッセイで表現するコンテスト「リリー・オンコロジー・オン・キャンバス がんと生きる、わたしの物語。」の授賞式が開催されました。第13回目となる今回は、3年ぶりの現地開催であり、授賞式の様子はオンラインにより中継されました。
リリー・オンコロジー・オン・キャンバスは、日本イーライリリー株式会社が2010年に創設したコンテストであり、患者さんやご家族が、がんと告知された時の不安や、がんと共に生きる決意、がんの経験を通して変化した生き方などを作品とエッセイで表現していただき、多くの⽅々と分かち合っていただく「場」です。
同企画は、絵画・写真・絵手紙の3部門に分かれており、それぞれ最優秀賞、優秀賞、入選の作品が紹介されました。
自分と被写体を重ね合わせた2つの最優秀作品
絵画部門で最優秀賞を受賞した作品は、がんの再発が分かり落ち込んでいた作者が、友人の誘いで行った旅行での風景を描いたものです。その時に見たススキが作者とそれを支えた友人の描写になっていて、それまでの葛藤や思いなどがエッセイを通じて強く心に刺さりました。
(画像はリリースより)もう1作品は、がんと宣告され、入院前に作った焼きおむすびの写真でした。エッセイに書かれている、宣告された時の混乱や絶望から、入院・治療を受け入れ準備をしていく段階、そしてその中に生きることを前向きにとらえた作者の心の経過と合わせて観るとより味わい深い作品になっていました。
(画像はリリースより)1枚の作品に患者さんの心の移り変わりが繊細に描かれており、その作品を通じて患者さんの様子が目の前に浮かぶような感覚がありました。講評の亀山哲郎さん(カメラマン)の「うまい作品といい作品は違う。受賞されたものはいい作品だ」という言葉に共感しながら授賞式を視聴していました。
家族への感謝があふれる作品の数々
優秀賞の作品はそれぞれ、父と娘、母と娘のエピソードを作品とエッセイにしたものでした。学生時代にがんに罹患し支えてくれた母への感謝、頑固な父へバージンロードを一緒に歩いてくれた感謝、母娘互いの配偶者が白血病となり支えあった親子の絆が描かれた作品の数々でした。がんの宣告、治療を通じて強く結ばれた家族の情景が浮かんで思わず涙してしまう作品ばかりでした。
すべてのエピソードが、家族を思い、感謝し支えあうという、どの家庭、人間関係にも基盤になっていることだからこそ、よりぐっと心に染みわたり、私自身も改めて家族への感謝や大切さを見直しきっかけになりました。「がんになったから」ではなく、その人、その家族らしさがあふれているので、見ている人の気持ちを動かす作品なんだと感じました。
最後に、日本イーライリリー株式会社オンコロジー事業本部 本部長の小嶋毅彦氏は「今年は受賞者の生の声を聴くことができて大変感動しました。この企画は、なぜ我々が革新的な薬剤を開発するのか?ということを毎回振り返るいい機会になっています。これを機に人生を振り返り、いろいろなことに思いを馳せたとおっしゃる方がいます。このような企画に携われてよかったと思っています。今後も革新的な抗がん剤開発に取り組むとともに、患者さんや支援者の心に寄り添い、がんになっても自分らしく生きられる社会のサポートを行っていきたいと思っています」と述べていました。
参考:日本イーライリリー株式会社 2023年5月9日プレスリリース
笠井信輔の「こんなの聞いてもいいですか」on the web 2023 スピンアウトプログラム「がんとアート」