オンコロLINEの友だちを対象に、がん患者さんやご家族の方などのご意見・お考えを共有したり、がんについて学べる1問クエスチョンのオンコロ・ワンクエスチョン！ その結果と解説をがん情報サイト「オンコロ」にて公開しています！ ▼オンコロ・ワンクエスチョンの一覧

質問

「がん細胞に対し『制御性T細胞（Treg）』はどのような役割を果たしているでしょうか？」

結果・解説

今回のオンコロ・ワンクエスチョンはクイズ形式で実施しました。本記事では最近話題の「制御性T細胞（Treg）」に関する情報とクイズの解説をご紹介します。

オンコロ・ワンクエスチョンの解答

「がん細胞に対し『制御性T細胞（Treg）』はどのような役割を果たしているでしょうか？」という質問に対する適切な選択肢は「免疫細胞の働きを抑制し、がん細胞を守る」になります。 まずは「制御性T細胞（Treg）」とは何か、そしてクイズの解説をご紹介しますので、ぜひご一読下さい。

制御性T細胞（Treg）とは？

私たちの免疫システムには、がん細胞やウイルスなどを攻撃する「アクセル」役の細胞（例：キラーT細胞）と、その攻撃が過剰になって正常な細胞まで傷つけないように調整する「ブレーキ」役の細胞が存在します。 大阪大学の坂口志文 特任教授が発見し、2025年のノーベル生理学・医学賞の受賞理由ともなった「制御性T細胞（Treg）」は、この免疫のブレーキ役を担う中心的な細胞です。普段は、免疫の暴走を防ぐ「自己免疫疾患」などから私たちの体を守るために不可欠な存在です。 しかし、がん細胞は非常に巧みで、このブレーキ役であるTregを自分たちの周りに集めて利用してしまいます。その結果、がんを攻撃するはずのアクセル役の免疫細胞が力を発揮できなくなり、がんは免疫の監視から逃れて増殖しやすくなるのです。 ▼がんに関する用語辞典：制御性T細胞

選択肢の解説

◯ 正解： 免疫細胞の働きを抑制し、がん細胞を守る 解説：これが、がんの環境におけるTregの最も重要な役割です。Tregは、がんを攻撃する「キラーT細胞」といった免疫細胞の働きを直接的に抑え込んだり、活動を弱める物質を出したりします。これにより、免疫システム全体にブレーキがかかり、がん細胞が攻撃されにくい環境が作られます。結果として、Tregは意図せずしてがん細胞を守るボディーガードのような存在になってしまいます。 × 不正解： がん細胞を直接攻撃する 解説：がん細胞を直接見つけて攻撃するのは、主に「キラーT細胞（細胞傷害性Tリンパ球）」の役割です。Tregは、このキラーT細胞の働きを抑えるブレーキ役であり、自らがん細胞を攻撃することはありません。アクセル役とブレーキ役で、正反対の働きをしています。 × 不正解： がん細胞が出すサイトカインを無効化する 解説：「サイトカイン」は、免疫細胞同士が情報をやりとりするための物質です。がん細胞もサイトカインを出すことがありますが、Tregの主な役割はサイトカインの無効化ではありません。むしろ、Treg自身が免疫を抑える働きを持つサイトカインを放出することで、他の免疫細胞の活動にブレーキをかけます。 × 不正解： がん細胞にエサとなる栄養素を供給する 解説：Tregが、がん細胞に積極的に栄養を供給することはありません。逆の現象として、がん細胞は非常に多くの栄養（ブドウ糖など）を消費するため、がんの周りでは、がん細胞と免疫細胞との間で栄養の奪い合いが起こることが知られています。栄養不足になった免疫細胞は、十分に働くことができなくなります。

さいごに

2025年10月6日に、Tregの発見と機能解析をはじめとする免疫学分野への貢献が評価され、坂口志文先生（大阪大学 特任教授）がノーベル生理学・医学賞に選出され、大きな注目を集めています。 Tregのがん治療への応用については、Tregの除去や活性化の抑制などのアプローチが考えられていますが、がん細胞のTregのみを特異的に抑制する治療法の確立や、がん種や病期に特有のTregの役割に応じた個別化など、まだまだ克服すべき課題が多いとされています。 今後の研究の進展に、どうぞご期待ください。

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