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「がん治療中・後に、以前と比べて記憶・思考・集中力などの変化を感じましたか?」オンコロ・ワンクエスチョンvol.119

[公開日] 2026.04.16[最終更新日] 2026.04.16

オンコロLINEの友だちを対象に、がん患者さんやご家族の方などのご意見・お考えを共有したり、がんについて学べる1問クエスチョンのオンコロ・ワンクエスチョン! その結果と解説をがん情報サイト「オンコロ」にて公開しています! ▼オンコロ・ワンクエスチョンの一覧 友だち追加

質問

「がん治療中・後に、以前と比べて記憶・思考・集中力などの変化を感じましたか?

結果・解説

がん治療中や治療後に、「以前より物忘れが増えた」「集中力が続かない」と感じることはありませんか? それは決して「気のせい」や「加齢」だけではありません。一般的には「ケモブレイン」、医学的には「CRCI(がん関連認知機能障害)」と呼ばれ、報告されている症状の一つです。 今回のオンコロ・ワンクエスチョンでは、皆さんが少しでも心穏やかに日常を過ごせるよう、現在わかっていることと、具体的な向き合い方をお伝えします。

多くの方が抱える認知機能の違和感

がん治療に伴う認知機能の変化を経験する人は、決して少なくありません。 今回のオンコロ・ワンクエスチョンの回答結果では約87%と、多くの方が記憶力や集中力の変化を感じたと回答されています。 このように、多くの方が同じ悩みを抱えています。「自分だけがおかしくなったのではないか」という孤立感を感じる必要はありません。これは治療に伴って起こりうる症状の一つです。

「ケモブレイン」の現在わかっていること

以前は抗がん剤(ケモ)の影響のみと考えられていたこの症状ですが、最近では研究が進み、捉え方が変わってきています。 ■ 名称の変化:CRCI(がん関連認知機能障害) 以前は「ケモブレイン」と呼ばれてきましたが、最近の研究では、手術、ホルモン療法、がんそのものによるお体の変化、そして診断に伴う強い精神的ストレスなど、さまざまな要因が重なり合って起こることがわかってきました。 そのため、現在はより広い意味を持つ「CRCI(Cancer-Related Cognitive Impairment:がん関連認知機能障害)」という呼び方が一般的になりつつあります。 ■ 症状は「一過性」の可能性が高い 多くの場合、これらの症状は治療終了後に時間の経過とともに回復・改善する傾向にあります。ずっと続くものではないと知っておくだけでも、心の負担が軽くなります。 ※回復のペースは人それぞれですので、焦らずご自分のリズムを大切にしてください。 ■ 原因は「多因性」 原因は一つではありません。以下の要素が複雑に絡み合っていると考えられています。 ・薬剤の影響: 抗がん剤やホルモン療法などの直接的な影響。 ・身体的要因: 貧血、睡眠不足、更年期のような症状など。 ・心理的要因: 治療への不安、抑うつ気分、強いストレス。

「あなたのせい」ではない:心のケアとして

物忘れが続くと、「だらしなくなった」「老け込んでしまった」とご自分を責めてしまう方がいらっしゃいます。しかし、これは脳の機能的な一時的な変化であり、ご本人の努力不足や性格の問題では決してありません。 治療中のお体は、情報の処理に少し時間がかかっている状態なのです。まずは「これは症状なんだ」と認めることが、心の負担を軽くする第一歩になります。

日常を楽にするための「対処法」と「工夫」

原因のすべてが解明されているわけではありませんが、症状を和らげ、生活をスムーズにするための「支持療法(効果が示唆されている対処法)」がいくつか提案されています。 ① 「一つずつ、ゆっくり」を心がける 脳への負荷を減らすために、複数のことを同時に行う「マルチタスク」を避けましょう。「料理をしながら電話をする」「テレビを見ながら明日の準備をする」といった動作は、想像以上に脳の処理に負荷がかかります。「今はこれだけをやる」と決め、一つずつ完了させていくことが、脳を疲れさせないコツです。 ② 「補完戦略」で脳のメモリを節約する 記憶力に頼らず、下記のように外部ツールを積極的に活用しましょう。 ・スマホのアラーム・通知機能: 薬の時間や予定をリマインド。 ・メモの習慣化: 「やるべきことリスト」を作り、終わったら消していく。 ・置き場所を固定する: 鍵や財布など、大切なものの場所を決め、脳の負担を減らす。 ③ 適度な運動を取り入れる 有酸素運動(ウォーキングなど)が、がん患者さんの認知機能を改善や維持に役立つ可能性が示唆されています。無理のない範囲で、散歩などから始めてみましょう。 ④ 脳トレよりも「休息」を 焦りから「難しいパズルを解かなければ」と無理をしてしまうと、かえって脳を疲れさせてしまうことがあります。CRCI対策で何より大切なのは、脳の疲労を防ぐことです。 質の良い睡眠や、心地よい音楽を聴く時間、深呼吸など、「脳を休ませる時間」を意識的に作ってあげてください。 ⑤ 周囲へ助けを求める・伝える すべてを自分一人で解決しようとすると、かえってストレスが増えてしまいます。周囲の人に状況を伝えておくだけでも、心のゆとりが生まれます。 ・「今、治療の影響で少し物覚えがゆっくりになっているので、メモをもらえると助かります」 ・「集中力が切れやすい時期なので、大事な話は一つずつお願いできますか?」 このように、「治療の影響であること」と「どうしてほしいか」をセットで伝えると、周囲もサポートしやすくなり、孤立を防ぐことにつながります。

ご家族の方へ:理解が最大のサポートに

ご家族の方が「なぜこんなこともできないの?」と感じてしまう場面では、患者さんはさらに傷つき、ストレスによって症状が悪化しやすくなることもあります。 「これは本人のやる気の問題ではなく、治療の影響による一時的な脳の変化である可能性がある」と理解していただけると、患者さんにとって大きな支えになります。できないことを責めるのではなく、一緒にメモを確認したり、静かな環境を作ったりするなどのサポートが、患者さんにとって安心につながります。 また、患者さんを支えるご家族もまた、これまで通りにいかない日常に戸惑い、疲れを感じてしまうのは自然なことです。患者さんを理解しようと努めるあまり、ご自身を後回しにしていませんか? もしイライラしたり、悲しくなったりした時は、ご自身を責めないでください。ご家族も一人で抱え込まず、友人や専門家、あるいは同じ立場の方に「ちょっと疲れた」と、心の荷物を下ろせる場所を大切にしてください。

「わからないという事実」を誠実に受け止める

科学的に見て、CRCIはまだ解明されていない部分が多く、研究が進められている分野です。医師に相談しても「様子を見ましょう」と言われることも少なくありません。 だからこそ、皆さんが経験している「実態」を医療者に伝えていくことが大切です。日々の体調や困りごとをメモしておき、診察時にシェアすることで、将来のより良いケアにつながっていきます。

最後に:つらい時は専門家へ相談を

この記事で紹介した内容は「診断」ではありません。 もし「日常生活に支障が出るほど物忘れがひどい」「不安で眠れない」といった場合は、一人で抱え込まず、主治医や看護師、または病院にある「がん相談支援センター」にご相談ください。専門の相談員が、患者さんとご家族の方の生活をサポートするお手伝いをしてくれます。

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