乳がん啓発月間の10月は、乳がんサバイバーとして毎年ブログを書いていたが、今年はあっという間に11月になってしまった。
私が診断を受けた頃は乳がんの罹患率は13人に1人であったが、今では9人に1人注1と、高く推移している。
がんを取り巻く環境は、ここ数年で著しく変化し、AYA世代の妊孕性や就労問題など、注目度が上がってきている。
一方で、若い男性などの多くは「ピンクリボン」の意味を知らないという現状もあり、がんという疾患を「ひとごと」と捉えている人がまだ多いことも事実である。
私が手術を受けて退院後、所用のため とある百貨店に入店した時の話。10月だったということもあり、正面入り口の館内案内男性スタッフさんを含め、百貨店のスタッフさん全員がピンクリボンバッジを着用していたことが、とても嬉しかったことを覚えている。
このように数年前から、がん啓発活動に力を入れている企業も増えてきた。 単なる啓発活動だけで終わらず、その活動を通じて多くの人々ががんに対して興味を持ち、理解を深めていって欲しいと切に願う。
今年は、新型コロナウィルスの感染が広がり、年始には想像もつかなかった生活を余儀なく送ることとなった。
会社員は、在宅勤務を週に数日取り入れる、会議はオンラインで実施する、などの勤務形態が続いているのではないだろうか。
セミナーやイベントも、オンラインが中心で、対面での開催は、コロナが収束するまでは難しい状況だろう。
残念なことに、私のまわりでも友人やお世話になった方々が、がん闘病の末、今年に入って旅立っていった。
コロナ禍のため、最期のお別れもできないことはとても残念なことでもあるが、元々「身内だけで」見送ることを望んでいた方もいるだろうから、個人的に心から感謝の意を送り、良き想い出を大切にしていこうと思っている。
今年は、コロナの影響も重なり、「死」について考える時間が増えた。
今年旅立った方々は、みなそれぞれに決めた生き方の道を明確にしており、そしてそれを見事に実行されていた方ばかりだ。
「もっと長く生きたい」、「もっとやりたいことがある」、という想いを残して旅立ったかもしれない。
辛い闘病生活を送られていたはずだが、並行してご自身の生活を大切に過ごされた方たちばかりだ。
人間は生まれた以上、平等に死は訪れるので、それが長いか短いか、勝ち負けの問題ではないと信じている。
最近、生から死への過程を「山」に例えて考えるようになった。
「誕生」が登山口として、麓から必死に登頂を目指して生きる。
その登山には、喜び、幸福を感じる坂もあれば、岐路に迷う道もあり、挫折や苦悩の険しい崖にぶつかることもあるだろう。
それが人生であり、平坦な道のりは誰にも用意はされていない。登山の方法は、人それぞれであることは間違いない。
人が頂上に立った時、それが「死」なのではないか、と想像している。
もっと高い山に登りたかった人もいるかもしれない、もっとゆっくり時間をかけて登山したかった人もいるかもしれない。
「頂上」に到着した時点で、登山は頂点に到達する。頂上にいる人達は、みなそれぞれの人生を全うした。
人生を登りきった。
みな「生ききった」のだ。
今は、下山をしているのだろうか。
上りの道で気がつかなかった山道を楽しんでいるかもしれない。
登山で駆使した足の痛みから解放されて、休憩を取りながらゆっくりとした足取りで下っているかもしれない。
その下山の先には、何が存在するのだろう。輪廻転生は個人的には信じていないが、みなが穏やかな気持ちで無事下山されることを願っている。
これまでの感謝を込めて。
「この世に生を受けたこと。それ自体が最大のチャンスではないか」-アイルトン・セナ(F1レーサー) 注1国立がん研究センターがん情報サービス(2018年データに基づく)より