9月28日、 MSD株式会社「HPVワクチン訴訟に関するステートメント」を提示した。内容は『複数の女性およびその代理人により、国とHPVワクチンの製造会社に対して提起された訴訟について、法廷で自らの主張に関する証拠を提出していく』というものであった。

本日、MSD広報事務局から「ペムブロリズマブ(キイトルーダ)がメラノーマ適応にて承認された」とメールがあり、そのニュースリリースを確認するためにMSD株式会社のホームページを閲覧したときにこのステートメントを見つけて、「おっ」と思った。

かなり強気と思ったのと、製薬企業としてはかなり珍しいステートメントであると言えたからだ。

4価HPVワクチンであるガーダシル®は、日本では2011年に承認され、2008年に上梓された2価HPVワクチンであるサーバリックス®とともに、「子宮頸がんを予防できるワクチン」となる。

これらのHPVワクチンについて、2013年4月に中学1年生から高校1年生までを対象に定期接種が開始。しかしながら、本格的に子宮頸がん予防がスタートした矢先、その2か月後にワクチン接種後の原因不明の慢性疼痛などを伴う有害事象報告があり、厚生労働省は「接種の積極的な勧奨」が中止された。これは2016年9月現在も中止されたままだ。

「HPVワクチンにて重篤な副反応が発現。だから、推奨やめます」というのはごく自然であるし、薬害問題から見ればごく当たり前といえば当たり前である。

HPVワクチン そろってきたエビデンス 日本だけが取り残されている

しかしながら、ステートメントにも記載されているような以下の事実がある。
1.170万人以上を対象とした15を超える試験によれば、本件原告の主張に類似する症状とガーダシル®の間に関連性はないとされている。

2.ガーダシル®の安全性と有効性のプロファイルは、9~45歳の男女29,000人以上を対象とした7つのフェーズIIIの臨床試験によって確立された。

3.WHOに加え、CDC、カナダ保健省、欧州医薬品庁(EMA)およびオーストラリア保健省薬品・医薬品行政局(TGA)など、世界中の主要な保健機関は各国の集団ベースの研究にもとづき、HPVワクチンのベネフィットは、潜在的なリスクを上回るものと結論づけており、このワクチンの接種を継続して推奨している。

4.米国食品医薬品局(FDA)が、2006年にガーダシル®の安全性と有効性を確認した上で世界で初めて承認して以来、この10年間で、実臨床に与えるガーダシル®のインパクトが明らかになってきている。米疾病予防管理センター(CDC)は、本年、米国でHPVワクチン導入後から6年で、6型、11型、16型、18型のHPV型の保有率が、14~19歳の女性で64%、20~24歳の女性で34%減少したという有効性に関するデータを発表した。
Prevalence of HPV After Introduction of the Vaccination Program in the United States(Pediatrics. 2016 Mar;137(3))

5.世界保健機関(WHO)のワクチンの安全性に関する諮問委員会(GACVS)は、2015年12月、「同ワクチンの接種勧奨に変更を加えるような安全性の問題はこれまでに見つかっていない」と述べるとともに、日本について特に言及し、「若い女性が、本来予防しうるHPV関連がんの危険にさらされたままになっている」と警告を発した。

6.2015年8月には日本産科婦人科学会が、2014年10月には日本小児科学会が、HPVワクチン接種の積極的勧奨再開を求める声明を発表した。

7.2016年4月には、17の学術団体が、「ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)接種推進に向けた関連学術団体の見解」を示し、HPVワクチンの接種を推奨している。

要するに、「170万人15試験でガーダシルの安全性は確立されており、控訴の副反応との因果関係を肯定できるものがない。そして、アメリカではHPV感染者は確実に減少している。WHOは自らHPVワクチンを推奨する一方、日本で推奨再開しないことを問題視している。このようなことがわかってきて、日本の関連学会も推奨し始めた。」ということだ。

あなたならどうしますか?

この問題は佳境を迎えていると感じる。

今回のステートメントは、エビデンスデータの充実、WHOの後押し及び関連学会の後押しもあってこそのステートメントといえよう。

冒頭で「強気だ」と思ったのは、それでも控訴している数人の一般人に対して大企業がニュースリリースとしてステートメントを提示するというのは力技過ぎて、物議をかもすのではと思ったまでである。

2015年7月28日に、9価HPVワクチンであるガーダシル9が国内承認申請された。ガーダシル9は、従来のガーダシルでは65%程度しか予防できなかったところ約90%を予防できるとのことであるが、1年経過した現在も承認されていない。

「日本では、子宮頸がんは、15~44歳の女性の間では、乳がんに次いで罹患率の高いがんであり、特に20~30代の若い女性で増加。毎年、約10,000人もの女性が新たに子宮頸がんにかかり、約3,000人が亡くなっている。日本での子宮頸がん検診の受診率は42.1%にとどまっており、HPVワクチンの接種率も0.7%から1.1%と低い状況である。よって、女性を子宮頸がんから守るには、検診とともにHPVワクチン接種が重要な役割を果たす。」というのがMSDのステートメントの締めくくりである。

なお、私にも娘がいるが、適応年齢になれば必ずHPVワクチンは受けさせたいと思っている。

あなたならどうしますか?

HPVワクチン訴訟に関するMSD株式会社のステートメント

記事;可知 健太


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