日本臨床腫瘍学会 オプジーボ不適切使用を問題視 死亡例確認にて 緊急注意喚起


  • [公開日]2016.07.14
  • [最終更新日]2017.11.13[タグの追加] 2017/11/13

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注:この記事はコラムです。主観が入っております。

臨床腫瘍学会 緊急注意喚起 オプジーボ不適切使用により死亡例も

7月13日、公益社団法日本臨床腫瘍学会;JSMO (理事長 大江裕一郎氏)は、免疫チェックポイント阻害薬の治療を受けたい患者に対して、適正治療を訴えました。

この注意喚起を見たとき、7月12日、小野薬品とBMSが医療関係者向けに注意喚起した「オプジーボ投与終了後にEGFR-TKIを投与した症例に、両剤の影響が否定できない間質性肺疾患が発現した症例が7例報告され、その内の3例が死亡に至っていること」を受けてのことだろうと思っていました。(なお、EGFR-TKIタグリッソPD-L1抗体デュルバルマブの併用第1b相試験(TATTON)にて、併用群の間質性肺疾患様事象発現頻度が38%、うち日本人症例においては10 例中6 例であったことにも注意喚起していました)

しかし、昨夜、NHKニュースWebが「がん新治療薬 適応外投与で副作用 死亡例も」という記事を報じ、内容を見て驚愕。

安全性有効性が確認されていない大腸がんなどの患者に投与し、全身の筋力が低下する重症筋無力症などの重い副作用を起こすケースが複数起きていたことが分かり、全国のがんの専門医でつくる日本臨床腫瘍学会は緊急の声明を出して注意を呼びかけることになりました。」と書いてあるのです。。。

大腸がんって。。。免疫チェックポイント阻害剤の効果が乏しいと言われているがん種の1つでは。。。。

因みに肺癌学会は承認と同時期の2015年12月に注意喚起を提示しています。
オプジーボを使用したい全ての肺がん患者さんへ 肺癌学会が書面による’お願い’を発表

良いことだけではないオプジーボ 今までにない副作用の発現率10%

免疫チェックポイント阻害剤ニボルマブ(オプジーボ)は新規免疫療法の1つです。近年、免疫細胞上のPD-1タンパクが腫瘍細胞上のPD-L1に結合することにより、免疫細胞から腫瘍細胞への攻撃することにブレーキがかかってしまうことが明らかになり、それのメカニズムを抑制する薬剤がPD-1抗体であるオプジーボです。

2014年7月に「根治切除不能な悪性黒色腫」の適応にて承認・上市されてはいたものの、2015年12月に「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」で承認されたことをかわきりに、その効果や薬価の高さで脚光をあびたと思っています。

免疫チェックポイント阻害剤のすごさは病態コントロール期間の長さであり、最近の臨床試験結果では一部(5~30%)の方が従来の治療よりも長期生存が望める可能性がでてきました。

一方、効果がない患者には通常の抗がん剤より効果を発揮しない可能性があり、今までと全く異なるタイプの薬剤であるため重症筋無力症など従来の抗がん剤では認められない副作用が発現する可能性があります。JSMOによると「間質性肺炎、甲状腺機能異常、劇症 I 型糖尿病、自己免疫性腸炎、重症筋無力症などが約 10%の患者さんにみられ、死亡例の報告もあります」とのことです。

そのため、製造販売元である小野薬品工業株式会社及びブリストル・マイヤーズ株式会社は、施設および医師要件として「日本臨床腫瘍学会等の専門医が在籍」、「緊急時に十分な対応可能」、「CTが常設」「E-Learningの受講を終えている医師」など10つの条件を課しています。少し、治験の選定条件に似ているなと思いました。

オプジーボによる「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」の治療が受けられる施設・医師の要件(2015年12月17日)

オプジーボ 適応外で使用したい人続出

現在適応がないがん種に関しても、有効である可能性のエビデンスが揃ってきているのは事実であり、適応外の患者も使用したい気持ちも理解できます。

しかしながら、保険適応外で使用するには自費診療となり、とんでもなく高額な費用がかかり、そして、安全性のリスクもぬぐえません。さらに、そこまでしても残念なことに、用法用量がメラノーマや肺がんで適応取得しているものには遠く及ばないことが多いです。

さらに、免疫チェックポイント阻害剤をその他の免疫療法と掛け合わることは非常に危険であり、現在、臨床試験を海外などで実施し始めている段階です。これをWeb広告等まで使用して啓発している業者(あえて、クリニックではなく業者と言います)は悪質だと思います。(実は、もっと巧妙な罠がはられつつありますが、またの機会で。。。)

JSMOの文書は以下の通りです。

「施設要件、医師要件を満たさない施設・医師が、国内販売企業を通さず、海外から個人的に輸入した免疫チェックポイント阻害薬を添付文書とは異なる用法・用量で適応症以外の疾患に投与する事例が散見され、副作用に適切に対処できないなど、大きな問題となっています。 」

NHKニュースでは以下の様に記載されています。

「副作用に対応できる医療機関に限って薬が出荷されていますが、全国のがんの専門医でつくる日本臨床腫瘍学会によりますと、一部の医療機関が「オプジーボ」を海外から輸入し安全性や有効性が確認されていない大腸がんなどの患者に投与して、副作用が起きたたケースが複数確認されたということです。医療機関のホームページなどで情報を得たがん患者が、自由診療の形で受けているということで、入院設備が無いため副作用に対応できず、国立がん研究センターに救急搬送されてくるケースが起きています。」

結局、自分たちで対処できずに国立がん研究センターに緊急搬送という。。。こういった業者に、大切な命をあずけれますか??

オンコロ 1日数件の免疫チェックポイント阻害薬関連問い合わせ有り

最後にオンコロ視点で述べたいと思います。

我々のWebサイト見ればわかりますが、いくつかの免疫チェックポイント阻害薬の治験広告掲載し、その事務局を請負っおります。
ということで、最近、オンコロにはがん患者さんやそのご家族から毎日2,3件の応募や問い合わせがあるのですが、掲載している治験対象以外のがん種の方からの問い合わせも少なくありません。

患者さんの多くは「免疫チェックポイント阻害薬での治療」を探しているようです。

該当する治験がないとわかると、自由診療でのオプジーボのことを聞いてくるケースが散見しますが、この記事で書いたような時事をお伝えしています。

よって、我々は、治験広告を掲載していなくとも、患者さんの要望に応えるために全力で治験情報を探しますので、お気軽にお問合せ下さい。ただし、それでも多くのケースでは条件に合った治験は見つからないこともご留意頂けばと思います。

免疫チェックポイント阻害薬 (ニボルマブ(オプジーボ®)、イピリムマブ(ヤーボイ®))などの治療を受ける患者さんへ(JSMO)

ニボルマブ(オプジーボ®)投与後にEGFR-TKIを使用した患者に発生した間質性肺疾患について(JSMO会員向け)

がん新治療薬 適応外投与で副作用 死亡例も(NHK NEWS WEB7月13日)

とりとめのない長文失礼しました。
ほんとの最後に勝俣先生のFacbook画像です。
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記事;可知 健太

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