11月8日、日本肺癌学会企画運営にて『もっと知ってほしい「肺がん」のこと in Tokyo』が開催されました。本イベントは、患者さんやそのご家族に対して肺がん治療について、第一線で活躍する医師が解説するという講演会となります。約200名が参加しました。

◆肺がんの概要:早川和重医師(北里大学病院副病院長)

肺がん概要の説明があり、がん治療には「こころ豊かに過ごすことが」と締めくくっていました。公演と同じ内容は以下にてご覧いただけます。
Minds医療情報サービス(Mindsやさしい解説 肺がん・肺がん検診)

◆肺がんの手術:池田徳彦医師(東京医科大学 主任教授)

外科治療の進歩を話されました。「初期診断の精度が上がっており、手術ができる時点で発見される早期肺がん患者が増えていること」、「外科治療の進歩は素晴らしく、2012年の肺がん手術35667件のうち65.6%が腹腔鏡手術となっており、これは7.8%であった1998年に比べて劇的の変化であること」、「術後においてもリンパ節転移がなければ、5年生存率は86.8%かなり高いこと」等、20年程度で劇的な進歩が見受けられました。最近は3D-CTナビゲーションシステムやロボット手術など高度な技術も浸透しつつあるとのことです。
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◆肺がんの放射線治療:中山優子医師(神奈川県立がんセンター放射線治療部長)

放射線治療の進歩を話されました。「がんの放射線治療は年間21万にであった2010年に比べて、2015年には35万に増加してはいるとのこと」、「しかしながら、欧米では6割程度使用するのに対して日本では3割程度と低い水準となること」、「放射線治療には『完治を目指す治療』と『緩和する』といった目的があり、高齢であるなどの理由にて手術をできない患者さんでも放射線治療(+化学療法)により完治を目指す一方、気道狭窄、脳転移や骨転移など転移層の腫瘍を小さくして疼痛等を緩和する治療が存在するとのこと」、「肺がんの放射線治療で気を付けなければいけないのは、病巣が呼吸で動くこととなるが、現在は画像誘導放射線治療といった呼吸に合わせて照射する放射線治療システムも存在するとのこと」等、こちらも科学技術の進歩が大いに貢献しているようです。

◆肺がんの薬物療法:加藤 晃史医師(神奈川県立循環器呼吸器センター呼吸器内科)

非小細胞肺がんを中心とした薬物療法を解説されました。薬剤治療の進歩についてもふれており、免疫チェックポイント阻害薬については「承認が近いであろうが、2次治療で限定されること」、「誰に効果があり誰に効果がないことが不明瞭であること」、「日本人の肺がん患者への安全性データの蓄積が不十分であること」などを述べられていました。最後に患者さんが『副作用が心配なので抗がん剤だけは受けないと決めています』と話された時には、医療者としては『病気の特徴ごとに希望に沿った治療があること』を丁寧に説明することが大切であると締めくくりました。
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◆肺がんと向き合って:長谷川一男さん(肺がん患者会ワンステップ代表)

肺がん患者の立場より公演されました。ステージ4と肺腺がんと診断されてから5年間が経過している長谷川さんですが、「がんに向きあうスタンスとして、『知って考えること』が大切である」、「辛い現実も知ってしまうことにはなるけれども、知らないままで不安におびえるより、知ったことでおこる不安の方がよっぽどましである」と話していました。例として、LCスクラムといった、肺がんの遺伝子変異を探索するプロジェクトがあり、それを知って参加することにより、自分に合った治療や治験薬が受けることができる可能性がある。可能性は低いかもしれないが、知らなければそのチャンスすらおとずれないと話していました。なお、11/28の日本肺癌学会学術集会にて「全国肺がん患者会連絡会議」を開催するとのことです。
長谷川さんはオンコロ上で体験談も語られています(コチラ)。

◆Q&Aセッション(すべての質問と回答を掲載しました)

Q:放射線治療後に、それが原因でがんになることはないですか?
A:放射線治療後に治療部位にがんがなったという症例は殆どいません。放射線治療によって数十年後にがんになることがごく稀に存在しますが、ほとんど問題視はされていません。

Q:腫瘍マーカーの重要性について。現在、治験薬を使用しておりCEAが高くなってきています。何か問題はありますか?
A:腫瘍マーカーはあくまでも補助的な指標です。値が高いのにもかかわらず、画像上、原発部位の腫瘍が大きくならない場合は他に転移があるか確認します。その値だけで判断するものではありません。

Q:手術できない場合、分子標的の治療は何がありますか。
A:現在のガイドライン上、ステージ3Bは化学療法+放射線治療となり、ステージ4の1次治療は分子標的治療が標準治療です。(遺伝子変異にもよります)

Q:いつAZD9291の承認されますか?
A:早期承認に向けての優先審査項目対象となったため、具体的には不明ですが早期の承認が期待されます。
A(患者):(肺癌学会ともに)ワンステップでは患者が医療を変えていくといったことで、厚労省に早期承認要望書を提出しました。

Q:オプジーボは高額ですが、二次治療として標準治療になりえますか?また、どこで使用できますか?
A:肺がんの二次治療として保険診療として承認されると確信しています。ただ、既に日本ではメラノーマ(悪性黒色腫)では承認されており、米国では非小細胞肺がんに対して承認されていますが、肺がんについての日本人の安全性は確立されていないため、使用される医療機関は限られるであろうと考えています。基本的にはがん拠点病院などは使用することができるようになると思います。

Q:重粒子線治療は保険適応になりますか?
A:現在でも保険適応ではありません。重粒子線や量子線は先進医療となりますので、治療費は300万円程度となります。学会としては保険適応を目指しています。

Q:アレルギー体質でも抗がん剤治療を受けることができるのでしょうか?
A:アレルギー抗原は人によって異なるため、実際に治療を行う際に主治医と相談頂くこととなります。

Q:ファーストラインとかセカンドラインとはなんでしょうか?
A:ファーストラインは1番初めに治療すべき薬剤の組み合わせとなり、セカンドラインは2番目に治療すべき薬剤の組み合わせとなります。

Q:免疫チェックポイント阻害薬と免疫療法はどう違うのでしょうか?
A:従来の免疫療法には免疫力を広く高めるものなどがあります。一方、免疫チェックポイント阻害薬はがん細胞が免疫から逃れる仕組みを抑制する薬剤です。一番の特徴は今まで言われてきた免疫療法は(少なくとも肺がんにおいて)効果があるということを証明した臨床試験データはないということです。実際にヒトに効果があるデータはないのに「動物で効いています」や「細胞では効いています」というデータにて売り出しています。免疫チェックポイント阻害薬は臨床試験にて非小細胞肺がんに対しても効果が証明された初めての薬剤となります。

Q:放射線療法は一回限りと聞きますが、なぜでしょうか?
A:完治するための放射線治療を行い、再発したときは放射線抵抗性のがん細胞が残存しているため効果が乏しいことが予想されることに加え、放射線は正常細胞にもダメージがあるため、効果と不利益の観点より推奨されません。なお、放射線抵抗性のがん細胞の特徴として低酸素状態というものがありますが、重粒子線は効果があるといわれています。

Q:小細胞肺がんへの治療はいかがでしょうか?
A:ここ数年は新しいエビデンス(データ)が乏しいです。小細胞がん煙草によるものは多いため、免疫チェックポイント阻害薬の高い効果期待されており、現在、臨床試験が実施されています。

Q:術後にリンパ節転移が発覚しました。術前にリンパ節転移を見つけることができないのでしょうか?
A:CTやPET-CTや超音波気管支鏡など、診断のレベルが上がっています。ただし、わかりづらい部位にある場合など、残念ながら術中に発覚することがあります。

Q:検診について、どんな病院を受診するのが望ましいでしょうか?
A:検診では胸部X線、人間ドッグでは基本CTが行われます。(米国のデータでは)CTにつてはヘビースモーカーで55歳から74歳では定期的に検査を受けることが望まれます。どこの病院が望ましいかという質問ですが、呼吸器の専門医や放射線の専門家がいるところがよいと思います。そういった病院はホームページ等で公表しているはずです。

Q:なぜ、転移するのでしょうか?
A:原発巣は肺の中にできます。がん細胞は血管やリンパ管を巻き込み、血管やリンパ管に入ります。血管などに入り込んだがん細胞は遊離し、別の臓器等にて再度着床するという性質があります。通常のがんは肺転移が多いですが、血流は肺を通って心臓に戻るため、多いと考えられます。一方、肺がんはすぐに心臓をとおって全身に回るため、様々な臓器に転移してしまいます。

Q:食生活に関する工夫はありますか。
A1:患者さんには「肺がんの場合は食生活はそこまで気にしなくていいです」と答えています。ただし、発がん物質を摂取することはお勧めしません。発がん物質はがんセンターのホームページに掲載されています。
A2:肺がんの治療中は副作用による食事の対策が必要な場合があります。個別のアドバイスは病院の栄養士が詳しくお話しできますので、問い合わせてください。
A3:合併症の管理が特に重要になります。たとえば糖尿病の合併がある場合、そのコントロールを大切にしてほしいです。肝機能障害がある方は、アルコールを飲んでほしくないなどがあります。他にも虚血性心疾患などにも気を使います。
A4:肺癌学会の見解ではありませんが、薬物療法の薬剤にアルコールが相互作用のあるものは少ないです。ただし、治療の初期段階では臨床検査データが悪くなった場合、それが副作用のものなのかアルコール摂取のものかわからなくなってしまいますので、お勧めしません。治療の初期段階でなければ摂取しても良い場合もありますので、担当医にご相談ください。
A5:放射線治療の場合は、放射線による食道炎に対するケアが必要となります。柔らかいもの、酸味がないもの、厚くないもの、刺激が少ないものを推奨します。
A(患者):体験者の方に聞いては如何でしょうか。先生方に患者側から伝えたいこととして、患者は「自分で何か病気に対して実施したい」けれども、「やることは何一つない」と言われてしまうと、インターネットで代替療法を調べた挙句、怪しい治療法に頼ってしまうケースがあるということです。

Q:末梢(肺の隅)にある肺がん確定診断はどのように行うのでしょうか?
A:がんの大きさが2~3cmであれば気管支鏡がスタンダードです。1㎝程度であればCTで確認して、悪性であれば手術する。良性であれば様子を見ることです。

Q:緩和ケアはどういものでしょうか?
A:定義がバラバラで一概のもはありませんが、「医学的な対応」また「気持ちへの対応」となります。あらゆる患者さんへの対応のことを緩和ケアといいます。もし、情報が少ないと思った場合は看護士さんにきいてみるのをお勧めします。あるいは、がん拠点病院の相談室に聞いてみるのもお勧めします。緩和ケアは終末期の診療ではありません。早期から対応する必要があります。

Q:家族として治療を受けたがらない父に悩んでいます。いいアドバイスはありますか?
A(患者):治療を受けたがらない理由にもよります。現実逃避であるか場合、私だったら「お前は大人だろ?」と言います。抗がん剤の副作用が怖いのであれば「一緒に考えよう」と言うと思います。
A:自分を置かれている状態を許容できない場合は、やりたいことを聞いてあげるのがいいかもしれません。また、知って考えるということが回答でもあります。なぜ、「家族が受けさせたいという気持ち」と「本人が受けたくない」といったようになるかは、情報のギャップと気持ちのギャップがあるのではと考えます。医療者としては気持ちのギャップはケアできません。双方お気持ちを見つめあうのがファーストステップではないかと考えます。

日本肺癌学会関連のイベント情報

・そうだ、がん診療の専門家と会ってみよう(第56回日本肺癌学会学術集会)(11月26日~28日)

◆感想
私の隣には患者さんとその奥さんらしき方が座っていましたが、どのセッションも「わかり易かったね」という会話や、オプジーボやAZD9291がいつ承認されるのかやどこで使用できるかという話になった時には「これが知りたかった」というような会話をされていたのが印象的でした。やはり患者さんはそういった情報が気になりますよね。しかし、レギュレーション上、こういった情報を企業側は発信しづらいです。少なくとも患者向けに広告は打てません。よって、メディアの役割は重要だと考えさせられました。

記事:可知 健太
Q&Aは録音などは取らずに記憶を頼りに作成しています。よって、細かいニュアンスに、若干、私のバイアスがかかっていることをご了承下さい。
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