第6回 アストラゼネカ・オンコロジーサイエンス・メディアセミナー「肺がん患者さんの薬剤へのアクセスを考える」聴講レポート


  • [公開日]2017.02.23
  • [最終更新日]2017.12.14

※情報配信が遅れたことお詫び申し上げます。

2017年1月31日、アストラゼネカ株式会社は、第6回 アストラゼネカ・オンコロジーサイエンス・メディアセミナー「肺がん患者さんの薬剤へのアクセスを考える」を開催した。北里大学医学部 新世紀医療開発センター 横断的医療領域開発部門 臨床腫瘍学教授の佐々木 治一郎先生による「肺がん患者さんと診断検査に関する調査の結果について」、NPO法人 肺がん患者の会 ワンステップ代表 長谷川 一男氏による「患者視点から見る、肺がん治療へのアクセスおよび診断検査について」、アストラゼネカ株式会社 三春 賢治氏による「肺がん患者さんの薬剤アクセスを確保するための取り組み」について講演が行われた。

近年、肺がん領域においては分子標的薬免疫チェックポイント阻害薬などの新薬の登場により進歩を遂げている。その新薬を使用するにあたって重要となってくるのが、どのようなタイプの肺がんであるかを調べるための診断検査である。診断検査が出来ない場合には折角の新薬も使用が出来ない恐れが出てくるのである。
本セミナーは、この重要な要素である「診断検査」について、「進行・再発非小細胞肺がん患者への組織採取や遺伝子検査に関する意識調査」の結果を含めながら、医療者と患者さんのそれぞれの視点で実臨床に基づいた肺がん医療を学ぶ場であった。

佐々木先生の講演では、がんの発現や悪性化に関与するドライバー遺伝子変異について一般向けにわかりやすい説明、最新の肺がん治療ガイドラインや遺伝子変異によって使用できる分子標的薬の有用性を示すデータの紹介、そして調査結果から考える医師の役割や課題についての話があった。
佐々木医師によると、EGFR遺伝子陽性の場合使用できるEGFR阻害薬は、よく効くがやがて耐性が出来てしまう。その際には再度検査(再生検)をすることで新たに使用できる薬剤をみつけることが出来る。しかし、あるデータによると37.5%の方が再生検の実施までに至らなかったという。その理由として、アクセス不能な腫瘍部位であったことが1番にあげられており、次いで医師の判断や患者さんの拒否が理由であるケースも多かった。このことは後に長谷川氏も述べているが、肺がんの生検で多く実施される気管支鏡検査はとても辛く、この辛い検査という事が再生検に至らない要因の1つになっている可能性があるという。
この様な中で現在、血液採取により行える検査が登場している。遺伝子変異の検出率の点では気管支鏡検査に劣るものの、簡便であり、患者さんへの侵襲性も低く、これまで再生検が実施出来なかった方でも検査の機会があり、それによって新たな薬の使用が出来るようになるかもしれないようだ。
佐々木先生は最後に、これからのがん診療に必要なことについて触れた。単に検査の結果を伝えて治療を提供するだけでは不十分である。細胞から得られた情報がなぜ治療に関係するのかを理解してもらう必要があり、患者さんその情報を知ることに対してのケアも提供していかなければならない。そして医師は独自の判断だけでなく患者さんの意見も取り入れて検査や治療の判断をしていくべきであると自身の考えを述べた。

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長谷川氏の講演では、自身の肺がん体験を踏まえつつ、肺がん患者の検査に対する意識や検査実施方法、ニーズについての解説があった。また、世界肺癌学会へ参加した話や患者として今後やっていきたい事について話があった。
調査結果においても肺がんの検査は辛いと感じる方がとても多い事が分かっているが、長谷川氏自身も辛かった体験をされており、その体験談からも肺がん患者の苦労の実態が明らかとなった。また、長谷川氏が感じる検査について、患者からの言葉としての話があった。血液による検査は気管支鏡検査に比べ簡便であることは良い事であるが、それ以上に治療選択の幅を広げられることが大きい。また、薬剤にアクセスしやすい環境はとても重要であり、そのための生検は速やかで、簡便で、安価であることが望ましい。そのためには医療制度の改革や、更なる医療技術の革新が待ち望まれると想いを語っていた。

三春氏からはアストラゼネカ社の取り組みとして、タグリッソ薬価収載前の無償提供の結果およびT790M血漿検査結果の倫理提供についての説明があった。
血漿検査結果提供プログラムについては以下プレスリリースを確認ください。
「アストラゼネカ株式会社、 EGFR T790M血漿検査結果の倫理提供に関するお知らせ」
https://www.astrazeneca.co.jp/media/press-releases1/2017/20170105.html

最後には質疑応答セッションが行われた。関心度の高かったものとして血漿による検査「リキッドバイオプシー」に関する質問が多く見られた。オンコロでは以下の質問を佐々木先生に行った。
「リキッドバイオプシーを一度行い陽性とならなかった場合に気管支鏡の検査を受けるとなると検査に時間が掛かり、治療開始が遅れてしまうのではないか?」という質問をしたところ、「いくつかの検査を並行して行う中で、リキッドバイオプシーをすることで大きく時間をロスすることはない」との事であった。

記事:濱崎 晋輔

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