HER2陽性乳がん患者に対する術後化学療法としてのカドサイラ、3年無浸潤疾患生存率88.3%The New England Journal of Medicine


  • [公開日]2018.12.18
  • [最終更新日]2019.02.15

2018年12月5日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にて術前化学療法後に残存疾患を有するHER2陽性早期乳がん患者に対する術後化学療法としての抗HER2抗体薬物複合体であるトラスツズマブ エムタンシン(商品名カドサイラ;以下カドサイラ)単剤療法有効性を比較検証した第Ⅲ相のKATHERINE試験(NCT01772472)の結果がGunter von Minckwitz氏らにより公表された。

KATHERINE試験とは、術前化学療法後に残存疾患を有するHER2陽性早期乳がん患者(N=1,486人)に対して術後化学療法としてカドサイラ単剤療法を投与する群(N=743人)、またはトラスツズマブ(商品名ハーセプチン;ハーセプチン)単剤療法を投与する群(N=743人)に無作為に振り分け、主要評価項目として無浸潤疾患生存期間iDFS)、副次評価項目として無病生存期間(DFS)、全生存期間OS)などを比較検証した国際多施設共同の第Ⅲ相試験である。

本試験が実施された背景として、抗HER2モノクローナル抗体薬の治療歴のあるHER2陽性進行性乳がん患者に対するカドサイラ単剤療法は、カペシタビン+ラパチニブ併用療法、または主治医判断の化学療法に比べて有用性があることが他の2つの第Ⅲ相試験より証明されている。そこで、本試験ではハーセプチン+化学療法後の残存疾患を有するHER2陽性早期乳がん患者に対する術後化学療法としてのカドサイラ単剤療法の有効性を検証している。

本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値は、カドサイラ群49歳(24-79歳)に対してハーセプチン群49歳(23-80歳)。人種はカドサイラ群で白人74.2%、アジア人8.7%、黒人2.8%に対してハーセプチン群白人71.5%、アジア人8.6%、黒人2.6%。ホルモン受容体ステータスはカドサイラ群でER陰性/PgR陰性28.1%、ER陽性/PgR陽性/ER・PgR陽性71.9%に対してハーセプチン群でER陰性/PgR陰性27.3%、ER陽性/PgR陽性/ER・PgR陽性72.7%。術前化学療法の種類はカドサイラ群でハーセプチン単剤80.8%、ハーセプチン+ペルツズマブ併用17.9%、ハーセプチン+他の抗HER2抗体薬併用1.3%に対してハーセプチン群でハーセプチン単剤80.2%、ハーセプチン+ペルツズマブ併用18.7%、ハーセプチン+他の抗HER2抗体薬併用1.1%。なお、患者背景は両群間で大きな偏りはなかった。

以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は以下の通りである。主要評価項目である3年無浸潤疾患生存率(iDFS)はカドサイラ群88.3%に対してハーセプチン群77.0%、カドサイラ群で無浸潤性の病変再発(iDFS)のリスクを50%統計学有意に減少(HR:0.50,95%信頼区間:0.39-0.64,P<0.001)した。副次評価項目である3年無病生存率(DFS)は、カドサイラ群89.7%に対してハーセプチン群83.0%、カドサイラ群で無病生存(DFS)のリスクを40%減少(HR:0.60,95%信頼区間:0.45-0.79)した。

一方、安全性として全グレードの治療関連有害事象(TRAE)発症率は、カドサイラ群98.8%に対してハーセプチン群93.3%。グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)発症率はカドサイラ群25.7%に対してハーセプチン群15.4%。重篤な治療関連有害事象(TRAE)発症率はカドサイラ群12.7%に対してハーセプチン群8.1%。治療中止に至った治療関連有害事象(TRAE)発症率は、カドサイラ群18.0%に対してハーセプチン群2.1%。また、1%以上の患者で発症したグレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)としては、血小板数減少でカドサイラ群5.7%に対してハーセプチン群0.3%、高血圧でカドサイラ群2.0%に対してハーセプチン群1.2%、末梢神経障害でカドサイラ群1.4%に対してハーセプチン群0%、好中球数減少でカドサイラ群1.2%に対してハーセプチン群0.7%、低カリウム血症でカドサイラ群1.2%に対してハーセプチン群0.1%、倦怠感でカドサイラ群1.1%に対してハーセプチン群0.1%、貧血でカドサイラ群1.1%に対してハーセプチン群0.1%。

以上のKATHERINE試験の結果より、Gunter von Minckwitz氏らは以下のように結論を述べている。“術前化学療法後に残存疾患を有するHER2陽性早期乳がん患者に対する術後化学療法としてのカドサイラ単剤療法は、ハーセプチン単剤療法に比べて無浸潤性の病変再発(iDFS)のリスクを50%統計学有意に減少しました。”

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