複数治療歴のある転移性尿路上皮がん患者に対するネクチン-4を標的にした抗体-薬物複合体エンホルツマブ ベドチン、全奏効率43%を示すJournal of Clinical Oncologyより


  • [公開日]2020.02.20
  • [最終更新日]2020.02.19
この記事の3つのポイント
・1回以上の化学療法の治療歴のあるネクチン-4発現のある転移性尿路上皮がん患者を対象とした第1相試験
・ネクチン-4を標的とする抗体-薬物複合体ADC)であるエンホルツマブ ベドチン単剤療法の有効性を検証
副次評価項目である全奏効率は43%、病勢コントロール率は71%、奏効持続期間は7.4ヶ月を示した

2020年2月7日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて、1回以上の化学療法の治療歴のあるネクチン-4発現のある転移性尿路上皮がん患者を対象に、尿路上皮がんで高発現しているタンパクであるネクチン-4を標的とする抗体-薬物複合体(ADC)であるエンホルツマブ ベドチン単剤療法の有効性を検証した第1相のEV-101試験(NCT02091999)の結果がMemorial Sloan Kettering Cancer CenterのJonathan E. Rosenberg氏らにより公表された。

本試験は、1回以上の化学療法の治療歴のあるネクチン-4発現のある転移性尿路上皮がん患者(N=155人)に対して28日を1サイクルとして1、8、15日目にエンホルツマブ ベドチン0.50~1.25mg/kg単剤療法を投与し、主要評価項目として忍容性、副次評価項目として全奏効率(ORR)などを検証した第1相試験である。

本試験が開始された背景として、シスプラチンベースの化学療法は転移性尿路上皮がんにおけるファーストライン治療の標準治療になるが、5年全生存率(OS)は5%未満である。また、転移性尿路上皮がん患者の内、最大50%程度の患者が腎障害、心障害等によりシスプラチンベースの治療に対して不適応である。以上の背景より、転移性尿路上皮がんの新しい治療選択肢の開発が必要とされており、転移性尿路上皮がんにおいて高発現が確認されているネクチン-4を標的にした抗体-薬物複合体エンホルツマブ ベドチンの有用性が本試験で検証された。

本試験に登録された155人の患者背景は下記の通りである。年齢中央値は67歳(24-86歳)。性別は男性72%(N=111人)、女性28%(N=44人)。人種は白人89%(N=137人)、アジア人6%(N=9人)、黒人2%(N=3人)。ECOG Performance Statusはスコア0が30%(N=46人)、スコア1以上が70%(N=109人)。

前治療歴は3レジメン以上が29%(N=45人)。前治療歴の種類はプラチナ系ベースの化学療法96%(N=149人)、抗PD-1抗体薬72%(N=112人)、タキサン抗がん剤35%(N=54人)。原発巣部位は膀胱71%(N=110人)、上部管25%(N=38人)、尿道2%(N=3人)。

以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価である安全性としては、有害事象(AE)発症率は94%(N=145人)を示し、エンホルツマブ ベドチン1.25 mg/kg群において30%以上の患者で確認された全グレードの治療関連有害事象(TRAE)は以下である。疲労53%、脱毛症46%、食欲減退42%、味覚異常38%、悪心38%、末梢感覚神経障害38%、掻痒症35%、下痢33%。また、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)発症率は34%を示し、5%以上の患者で確認されたグレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は高血糖5%であった。

副次評価項目である評価可能であった112人の患者における全奏効率(ORR)の結果は下記の通りである。全奏効率(ORR)は43%(95%信頼区間:33.6%-52.6%)、完全奏効率(CR)5%(N=5人)、部分奏効率(PR)38%(N=43人)を示した。また、病勢コントロール率(DCR)71%(95%信頼区間:62.1%-79.6%)、奏効持続期間(DOR)は7.4ヶ月(95%信頼区間:5.6-9.6ヶ月)を示した。

なお、抗PD-1抗体薬治療歴のある89人の患者における全奏効率(ORR)の結果は下記の通りである。全奏効率(ORR)は43%(95%信頼区間:323%-53.6%)、完全奏効率(CR)3%(N=3人)、部分奏効率(PR)39%(N=35人)を示した。また、病勢コントロール率(DCR)74%(95%信頼区間:63.8%-82.9%)、奏効持続期間(DOR)は7.3ヶ月(95%信頼区間:4.2-9.6ヶ月)を示した。

また、エンホルツマブ ベドチン1.25 mg/kg群における全生存期間(OS)中央値は12.3ヶ月(95%信頼区間:9.3-15.3ヶ月)、1年全生存率(OS)は51.8%。抗PD-1抗体薬治療歴のある89人の患者における全生存期間(OS)中央値は12.3ヶ月(95%信頼区間:9.3-16.1ヶ月)を示した。

以上のEV-101試験の結果よりJonathan E. Rosenberg氏らは以下のように結論を述べている。”複数治療歴のある転移性尿路上皮がん患者に対するネクチン-4を標的にした抗体-薬物複合体エンホルツマブ ベドチンは、持続的で良好な抗腫瘍効果を示した。また、忍容性も問題ありませんでした。”

EV-101: A Phase I Study of Single-Agent Enfortumab Vedotin in Patients With Nectin-4–Positive Solid Tumors, Including Metastatic Urothelial Carcinoma(J Clin Oncol. 2020 Feb 7:JCO1902044. doi: 10.1200/JCO.19.02044.)

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