第3回 治療の選択肢を考えるとき、あなたの気持ちを大事にしよう
第3回ゲスト:近藤 恒徳 先生
東京女子医科大学附属足立医療センター泌尿器科教授・部長
豊富な臨床経験と研究実績を背景に、がんを含む先進医療を提供し、患者中心の診療と後進育成に努めています。
「オンコロ for シニア」は、65歳以上のがん患者さんとそのご家族のための情報サイトです。専門医による解説や体験者の声を交えながら、医療者と一緒に自分に合った医療を考えていくためのコツや工夫を、わかりやすくお伝えします。
現在、日本ではがんに罹患する方の約70%が65歳以上の高齢者といわれています。¹⁾この割合は年々増加しており、がん治療を受ける患者さんの多くが高齢者であることから、高齢者向けの情報提供の重要性はますます高まっています。なかでも、治療法や副作用、治療後の生活に関する情報は、高齢者にとって非常に重要であり、それらを理解し、最適な選択ができるよう支援することが求められています。
当サイトでは、65歳以上の患者さんとそのご家族の方に向けた動画を中心に、がん治療に関する情報を提供します。専門用語をできるだけ使わず、大きな文字やゆっくりとしたナレーションなどの視覚的な工夫を取り入れることで、どなたにもわかりやすい内容を心がけています。また、患者さんの価値観や希望を尊重し、医療者と共に治療方針を決めていく「協働意思決定(SDM:Shared Decision Making)」の大切さについても紹介し、その実践をサポートする内容になっています。
高齢の患者さんが自分のペースで治療について学び、自分にあった選択ができるよう、当サイトがみなさまの一助となることを目指します。
¹⁾厚生労働省「高齢者がん医療 Q&A 総論」(最新版)https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/000991069.pdf
メルクバイオファーマ株式会社・がん情報サイト「オンコロ」
第3回ゲスト:近藤 恒徳 先生
東京女子医科大学附属足立医療センター泌尿器科教授・部長
豊富な臨床経験と研究実績を背景に、がんを含む先進医療を提供し、患者中心の診療と後進育成に努めています。
第2回ゲスト:清水 研 先生
がん研有明病院 腫瘍精神科 部長
がん患者やご家族の「こころのケア」専門家、精神腫瘍医(サイコオンコロジー)の第一人者。
著書、メディア出演も多く、やさしい語り口が好評です。
第1回ゲスト:勝俣 範之 先生
日本医科大学武蔵小杉病院 腫瘍内科教授
腫瘍内科医としてSNSでがん医療情報を発信。メディア出演も多く、またSDM(Shared Decision Making/協働意思決定)普及に関してはパイオニア的存在です。
左から、ナビゲーター:矢方 美紀さん(乳がんサバイバー・声優・歌手・タレント)/ゲスト:近藤 恒徳先生(東京女子医科大学附属足立医療センター泌尿器科教授・部長)/コメンテーター:中川 和彦先生(近畿大学病院 がんセンター長) はじめに:あなたにとって最善の治療を考えるために大切なこと 本記事は、がん治療の選択肢を考える際のポイントをテーマに、ナビゲーターの矢方美紀さんと専門家の先生方が語り合ったものです。がん治療は、効果や副作用だけでなく、患者さんご自身のご希望や「どう生きていきたいか」といった価値観も重要です。医師とともに治療を考える際のコミュニケーションのヒントについても教えていただきました。 ※対談の様子は動画でもご覧いただけます。 ゲストには、日頃から、前立腺がんや腎細胞がん、尿路上皮がん等の泌尿器を中心としてご高齢のがん患者さんを多く診察しておられる、東京女子医科大学附属足立医療センター泌尿器科教授・部長の近藤恒徳先生、そしてコメンテーターとして、ご自身もシニアの立場から患者さんに寄り添う診療をされている近畿大学病院がんセンター長の中川和彦先生をお迎えしました。ナビゲーターは、乳がんサバイバーで、声優・歌手・タレントとして活動中の矢方美紀さんにおつとめいただきました。 ①治療を選ぶとき、何を大切にすればいいの? 矢方:治療の選択肢が増える中で、患者さんが最善の選択をするために、大切にすべきことは何でしょうか? 近藤:我々医師は、臨床試験の結果に基づき、効果が証明された治療をお届けすることを第一に考えます。しかし、薬の治療には副作用が伴います。シニアの患者さんは体力が落ちている方が多いため、治療の効果と副作用の程度のバランスが非常に重要です。 その上で、最も大事なのはご自身のご希望です。趣味を大事にしたい、仕事を続けたい、家族との時間を多く取りたいなど、ご希望は人それぞれです。普段からご自身で「どうありたいか」を考えておくと、実際に治療の場に当たったときに希望を伝えやすくなると思います。 中川:私たち医療者は、患者さんの体の状態だけでなく、心や生活全体の状態に目を向けるように努めています。患者さん自身が「こうありたい」とお気持ちを表明されると、より良い治療法の選択につながります。 最近では、医療者側からの情報提供だけでなく、患者さん側からもご自身の価値観や希望を述べていただき、相互作用によって最善の選択を追求するシェアード・ディシジョン・メイキング(Shared Decision Making/協働意思決定)という考え方が重要視されています。患者さんの数だけライフスタイルがあるため、自分自身に合ったものにするためには、医療者と患者さんがお互いにコミュニケーションをよく取っていくことが大事です。 矢方:一緒に考えることが大切なのですね。人生の中で何を大切にしたいのか、それを考えることが治療選択の第一歩なのですね。 ② あなたの気持ちを主治医にどう伝えればいいの? 矢方:ご自身の希望や不安を医療者に伝えるのは難しいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。上手に伝えるコツはありますか? 近藤:患者さんのお気持ちを我々医療者に伝えていただくことは、非常に大事なことです。診察室は緊張する場であり、診察時間も少ないため聞き忘れが出てくるものです。 アドバイスは2つあります。 1. メモを活用する* 事前に質問や確認したいことをメモに書いていただき、優先順位まで付けていただければ、聞き忘れがなくなります。聞いた答えをメモに残すことで、病気への理解も深まります。 2. 家族・友人の協力を得る* 一人で来院するより、ご家族やご友人がそばにいれば勇気が出て、思い切って質問できることがあります。また、ご自身で聞き忘れたことや気がつかなかったことを、ご家族やご友人が質問してくれることもあります。 *診断と治療>治療にあたって>医療者との対話のヒント(国立がん研究センター がん情報サービスWebサイト参照) どんな些細なことでも、遠慮せずにどんどんご質問ください。些細なことと思っても、実は医療者にとっては非常に重要な情報であることがあります。 中川:患者さんご自身が「私はどうありたいか」を述べていただくのが一番大切です。不安があるのは当然ですが、自分が言うべきことを伝えるという勇気を持って発言してもらいたいと思います。具体的には、何が不安なのかを明確におっしゃってください。例えば、「孫の世話を続けたいから、気力・体力が落ちるのは困る」「朝のウォーキングが趣味なので、歩けなくなるような副作用は勘弁してほしい」など、日常生活に具体性を織り交ぜた発言をしていただけると、医療者も想像でき、良い治療選択に結びついていく可能性があります。 矢方:コミュニケーションが、より良い治療につながっていくというのを改めて感じました。 ③ 納得できる治療を選ぶにはどんなことが役に立つの? 矢方:自分の気持ちを伝えること以外に、活用できるものはあるのでしょうか? 近藤:納得できる治療を選ぶためには、色々な情報を得て、調べていただくことが大事です。 1. 国立がん研究センター がん情報サービスインターネットのサイトですが、正しい情報が記載されており 、患者さん向けの情報も豊富です。我々医師も活用する信頼性の高い情報源です。 2. 相談支援センターを探す(国立がん研究センター がん情報サービス)全国の拠点病院などに設置されています。看護師、薬剤師、社会福祉士などのスタッフが、がんのことだけでなく、生活、費用、訪問看護など、幅広く相談を受け付けています。 中川:がん相談支援センターは患者さんの秘密もプライバシーも守ってくださるので、ぜひ活用してもらいたいと思います。患者さんは告知を受けると、家族や友人に迷惑をかけまいと心を閉ざしてしまう傾向があります。しかし、一人で不安を抱え込まず、ご家族やご友人など、いろんな人と積極的に、フランクに話し合った方がよいですね。 また、「自分がこれからどうなっていくのかわからない」という不安には、患者会など、同じ病気を経験された方々の話を十分聞き、情報を集めることが有効です。自分が孤立しているのではなく、みんな一緒なのだ、と理解を深めることができるでしょう。 今日のポイント 納得のいく治療選択のため、以下の3点を大切にしましょう。 ①自分の価値観を大切にしよう。どんなふうに生きたいか、何を大事にしたいかという、あなた自身の価値観や生活の質(QOL)を大切にすることが重要です。 ②あなたの気持ちはきちんと伝えてよい。不安や希望、迷いは当然のことです。遠慮せず、主治医や医療者に思っていることを伝えることで、よりあなたにあった治療選択につながります。 ③納得できる選択には、相談と情報が力になる。がん情報サービスの活用や、家族、相談窓口(がん相談支援センター)、患者会への参加など、自分の気持ちを整理し、支えてくれる人や場所をうまく使いましょう。 近藤:診察時間が短い現状でも、メモやご家族、看護師などの協力を得て、皆様のお気持ちは我々に伝わってまいります。今は、医師だけが治療を決めるのではなく、医師、看護師、薬剤師、みんな仲間だと思って、みんなと相談しながら一番いい治療を築いていくのが今の病院です。遠慮なくご自身のご希望を伝えていただき、最善の治療を進めていきたいと思っております。 中川:一番大事なことは、診断を受けた時に自分の将来が不安になる、その不安に打ち勝つことです。不安の根本は、初めてのことで将来が予測できないという点にあります。孤立するのではなく、医療者、ご家族や友人、患者会の方々等とお話をすることで、将来のことを類推することができます。そのためには話す勇気が必要です。ぜひその勇気を持っていただきたいと思います。 <出演者>・近藤 恒徳先生(東京女子医科大学附属足立医療センター泌尿器科教授・部長)豊富な臨床経験と研究実績を背景に、がんを含む先進医療を提供し、患者中心の診療と後進育成に努めている。・中川 […]
2025/11/04
左から、コメンテーター:中川 和彦先生(近畿大学病院 がんセンター長)/ナビゲーター:矢方 美紀さん(声優・歌手・タレント)/ゲスト:清水 研先生(がん研有明病院 腫瘍精神科 部長) はじめに:がんと向き合うあなたの心を支えたい 本記事は、がん患者さんの心のケアをテーマに、タレントの矢方美紀さんと専門家が語り合った対談のダイジェスト版です。がんという病気は、治療だけでなく、心の面でも大きな負担を伴います。この企画では、その心の苦痛をどう和らげ、どう乗り越えていくかについて、わかりやすくお伝えします。※対談の様子は動画でもご覧いただけます。 ゲストには、がん患者さんやご家族の心の苦痛を和らげることを専門とする、がん研有明病院腫瘍精神科部長の清水研先生、そしてコメンテーターとして、ご自身もシニアの立場から患者さんに寄り添う近畿大学病院がんセンター長の中川和彦先生をお迎えしました。ナビゲーターは、乳がんサバイバーで、声優・歌手・タレントとして活動中の矢方美紀さんにおつとめいただきました。 ① がん治療を受けるとき、どんな気持ちになることが多いの? 矢方:がんになると誰でも不安になると思いますが、一般的に患者さんはがんの診断を受けるとどのような気持ちになるのでしょうか? 清水:がん告知を受けた直後は、多くの方が「頭が真っ白になった」といった状態になります。数日経って現実だと分かると、「なぜ自分が」という怒りや、健康を失ったことへの悲しみ、将来への不安など、様々な負の感情が湧いてきます。20年ほど前の研究では、5人に1人くらいの方がうつ状態になるというデータもあります*。*内富庸介・小川朝生編. 精神腫瘍学. 医学書院, 2011, pp96-108(清水研分担著) 中川:診断を受けた後に自分の中にこもってしまい、医療者や家族と積極的に話さなくなる方もいらっしゃいます。置かれている状況を客観的に見ることができれば前向きな反応が得られるのですが、孤立してしまう方が多いのが現状です。 矢方:私も、やはりこもってしまって、誰にも聞けない時間がありました。でも、知識を持っている方から話を聞いたり、情報をいただいたことで、自分の進むべき答えにたどり着くことができました。 中川:がんと向き合うという困難な状況は、ご家族も含めて誰もが等しく直面することです。決して一人だけで苦しんでいるのではないと知っていただきたいですね。 清水:がんは人生そのものを脅かす病気なので、辛くて当然です。そして、悲しんだり不安になったりという「負の感情は決して敵ではない」ということをお伝えしたいです。泣くことは心の傷を癒す力があるので、安心して悲しい気持ちを出してください。くよくよすることが、病気の治療成績に大きな影響を与えるわけではないことも研究でわかっています。 中川:診断後、患者さんは治療方法の選択や仕事、家族のことなど、短期間で多くのことを考える必要があります。 清水:気持ちが全然追いついていかないのに、決断を迫られて辛かったという声をたくさん聞きます。病状にもよりますが、がんは1日、2日を争うものではないので、主治医の先生とよく相談しながら、納得のいく選択をしていってください。一人で考えられないときは、ご家族や信頼できる方の助けを借りるのが良いと思います。 矢方:診断を受けたばかりの患者さんは、いつもとは違う状態になってしまうので、そんな時に専門の方の助けが必要になることがありますね。 ② つらい気持ちを和らげるためには、どうすればいいの? 矢方:がんと向き合う上で、辛い気持ちを少しでも和らげるためにはどうしたらよいのでしょうか? 清水:悲しみは心の傷を癒す力があるので、ネガティブな気持ちに蓋をしないで出してください。一人で泣いたり日記を書く方法もありますが、誰かに温かく聞いてもらい、受け止めてもらう方が心は安心できます。私たち医療者も、ぜひ頼ってほしいと思っています。 中川:身近な方に相談するのが苦手な方も多いと思います。そういう時、自分自身で工夫して辛い気持ちを和らげるにはどうしたらいいでしょうか? 清水:是非そういう時こそ医療機関を頼ってください。全国400以上のがん専門拠点病院には「がん相談支援センター」があります。どんな相談にも乗ってくれるので、そういう場所に一歩踏み出すことが、何かにつながると思います。 矢方:誰かに話を聞いてもらい、受け入れてもらうことが一番の癒しになるというのは、私自身も経験しました。ちょっと踏み込んだところから、どんどん話が展開していってよかったなと思います。 清水:その一歩が、新しい「つながり」を見つけるきっかけになるのかもしれません。 中川:医療者が考える時間と、患者さん・ご家族が考える時間には大きな差があります。患者さんががんについてしっかりと学ぶことで、心の浮き沈みや怒りなども解決できるかもしれません。 ③ つらい気持ちを支えてくれるのは誰ですか? 矢方:辛い気持ちを和らげるために支えてくれるのは、どのような方々なんでしょうか? 清水:やはりご自身のことをよく知っているご家族や友人の方に、辛い気持ちを話せるといいですね。ご家族も辛い気持ちを抱えているのは当然なので、お互いに率直に話し合える関係が理想的です。 中川:特に高齢の方は、「迷惑をかけたくない」と思って自分で何とかしようとする方が多いですね。しかし、実際にはご家族や医療スタッフも頼ってほしいと思っています。 清水:責任感が強く生真面目な方ほど、抱え込んでしまいがちです。そういう時は、私たち医療者をぜひ利用していただきたいです。家族に心配をかけたくないと思う方でも、医療者なら話を聞くプロなので、何を話していただいても大丈夫です。主治医や看護師、そして専門的な対応が必要な場合は「こころの専門職」である私のような精神科につないでもらうこともできます。 中川:医師の説明がよく理解できなかったり、仕事や治療費、家族のことなど、具体的な心配事がある場合は、「がん相談支援センター」に相談するのが良いと思います。 矢方:また、同じ病気を体験した、経験した方の気持ちを分かち合える場もいいですよね。 清水:そうですね。ピアサポート*は、同じ病気を体験したことで、出会った瞬間から分かり合える感覚があると言われます。患者会だけでなく、ウェブやSNSなど様々な形がありますので、選択肢は広がっています。 *ピアサポート:同じような悩みや経験をもつ者同士(ピア:Peer)が支え合い、サポートし合うことをピアサポートと呼びます。仲間から支えられていると感じることによって、不安の解消や悩みの解決につながることが期待されています。(国立がん研究センター/がん情報サービス 用語集より) 今回のポイント 気持ちは揺れて当たり前です。がん治療中に不安や落ち込み、怒りなど様々な気持ちになるのは自然なことです。自分の心の変化に気づくことが、気持ちを整える第一歩になります。 辛さを軽くする方法はあります。自身の感情を表に出してみること、誰かに話すこと、医療者に相談することなど、自分に合った心のケアを見つけることが、治療を続ける力になります。 心のことも相談してよいのです。精神腫瘍医やカウンセラー、認定看護師など、気持ちの辛さを受け止めてくれる専門家がたくさんいます。一人で抱え込まず、話してみようと思えた時が、支えにつながるチャンスです。 中川:がんと診断された時、自分だけが孤立しているかのように感じてしまうことが多いですが、早くその孤立から抜け出して、いろいろな方と情報を共有する仲間を見つけていただきたいと思います。医療者もその中に入りますので、ぜひご利用ください。 清水:悲しみという感情は決して悪いものではありません。無理に我慢せず、泣きたいときには泣いてください。そして辛い気持ちを誰かに打ち明けることは、大きな力になります。多くの医療者は、困っている人を助けたいという思いで仕事をしていますので、ぜひ声をかけていただきたいと思います。 この動画がシニアの皆さん、そしてご家族の皆さんにとって、闘病の日々の中で少しでも安心して治療に臨むお手伝いになれば幸いです。とって、大きな希望となるでしょう。 *がん相談支援センターの情報(国立がん研究センター/がん情報サービスより) <出演者>・清水 研先生(がん研有明病院 腫瘍精神科 […]
2025/10/14
左から、ゲスト:勝俣 範之先生(日本医科大学武蔵小杉病院 腫瘍内科教授)/ナビゲーター:矢方 美紀さん(声優・歌手・タレント)/コメンテーター:中川 和彦先生(近畿大学病院 がんセンター長) はじめに:がんと向き合う「はじめの一歩」に寄り添いたくて 本記事は、主にシニア世代の皆さんに向けて「がん治療の選び方」をテーマにお届けした対談動画の、要点をまとめ、読みやすくしたダイジェスト版です。「がん治療は、主治医の先生にお任せすればいい」と思っていませんか?この企画では、主治医や医療スタッフとの対話の大切さをわかりやすくお伝えします。※対談の様子は動画でもご覧いただけます。 ゲストには、腫瘍内科のスペシャリストである勝俣 範之先生、そしてコメンテーターとして、シニアの視点から患者に寄り添う中川 和彦先生をお迎えし、主治医との対話、そして治療に対する「納得感」について語り合っていただきました。ナビゲーターは、乳がんサバイバーで声優・歌手・タレントとして活動中の矢方 美紀さんにおつとめいただきました。 ① がん治療には、どんな方法があるの? 矢方:まずは、がん治療にはどのような選択肢があるのかを教えてください。 勝俣:代表的なのは、手術・放射線治療・薬物療法です。薬物療法の中には、抗がん剤、ホルモン療法、分子標的薬などがあります。治療の選択は、がんの種類や進行度、患者さんの体力によっても変わってきます。 中川:今は治療法を「選べる時代」です。だからこそ、自分がどう生きたいか、何を大切にしたいかが治療選択の軸になります。特に高齢の方は、生活の質(QOL)や体への負担も考慮しながら、ご自身に合った治療法を選ぶことが大切です。 勝俣先生: 治療法は増えましたが、「どれが正解か」は人によって違います。ご自身の体力や持病、生活スタイルまで含めて、総合的に考える必要があります。 中川先生: 治療によっては副作用が長く続くケースもあります。「この治療を生活の中で続けられるか」という視点も治療効果に加えて大切です。 ② どうして、主治医や医療スタッフと一緒に考えることが大切なの? 矢方:「主治医と一緒に考える」とよく聞きますが、それはなぜ大切なのでしょうか? 勝俣:一昔前は医師が決めて、患者さんは従う、または選択肢を医師が提示し、患者さんが選び同意するというインフォームドコンセントという進め方が多くみられました。でも今はSDM(Shared Decision Making/協働意思決定)が重視される時代です。医療者と患者さんが話し合い、理解を深めながら、一緒に治療法を選んでいきます。 中川:とはいえ、診察室では遠慮してしまう方が多いですよね。「こんなこと聞いていいのかな」と黙ってしまう方が本当に多いのです。 勝俣:「わがままな患者さん」でいいんです。たとえば、「いい患者」であろうと治療の副作用を我慢し、医療者に伝えないという方もいますが、それが後の治療経過に影響を及ぼすこともあります。医療者に遠慮せず、あなたが思っていることはどんどん伝えてほしいです。 矢方:診察中、緊張して言いたいことを忘れてしまうことも多いですよね。 勝俣:質問を紙に書いて持ってくるのもおすすめしています。伝えたいことや聞きたいことは、事前にメモしておけば忘れにくくなりますし、診察後の「聞きそびれた」が減ります。 中川:説明が分からなければ、「もう一度説明してください」と言っていいんです。きちんと理解することが治療の第一歩ですから。 ③ みんなで決めると、治療にどんな良い影響があるの? 矢方:治療を医療者と一緒に決めると、どんなメリットがありますか? 勝俣:自分の状況や日常生活への希望を反映した治療を一緒に考え選べることが、最大のメリットです。それによって不安が減り、「納得して進められる」という前向きな気持ちにもつながります。 中川:最終的に何より大事なのは、「自分の人生を生きる」ということ。他人任せの選択では、後悔が残ることもあるんです。 勝俣:診察時間は数分でも、その会話が人生を左右することもあります。だからこそ、主治医との信頼関係はとても大切です。 矢方:ご家族が一緒に病院に行くこともありますよね。 勝俣:家族や信頼できる人と一緒に受診するのは大賛成です。1人では伝えにくいことも、第三者としてサポートしてくれることがありますし、医療者からの話を共有することで患者さんの日常生活での支えにもなります。 中川:もし家族がいなくても、友人や近しい人に付き添ってもらうことも有効です。診察での情報を後から一緒に振り返るだけでも、大きな力になります。 矢方:ここで今日のポイントをまとめてみたいと思います。 ① がん治療の選択肢を知ろう。 がん治療には手術、放射線治療、薬物療法など様々な方法があり、またそれぞれの治療にも複数の選択肢があります。それぞれの治療について主治医に質問し、どの治療が今の自分に合うのか、まずは選択肢を知ることが大切です。 ② 主治医や医療スタッフと一緒に考えることが大切です。 治療の選択は自分1人ではなく、主治医や医療スタッフと相談しながら進めることでより納得して、そして安心して治療に臨むことができます。そのためには治療選択肢について専門的な意見を聞くことと、自分の状況を伝えることの両方が重要です。看護師や薬剤師、相談センターなどの活用もおすすめです。 ③ SDM(Shared Decision Making/協働意思決定)のメリットを実感しよう。 SDMとは、患者さんと医療スタッフが一緒に選択肢について話し合い、治療を決定する方法です。納得して治療を選べることで、不安を減らし、前向きな気持ちで治療を続けることができます。 シニアの皆さんにとって、治療方法を理解すること、そして主治医や医療スタッフと相談しながらご自身が納得した治療を一緒に選択することの大切さがよくわかりました。最後に視聴者の皆さまへのメッセージをお願いします。 中川:ちょっと難しいテーマだったかもしれません。患者さんである皆さんは、がんと診断された時にいろいろな選択をしなければなりません。その時には1つだけしか選択肢がなければ簡単ですが、いくつかの選択肢があり、どうしても迷ってしまうというようなことが起こってきます。 […]
2025/06/03
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